決意の章
03rd
焦燥
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右衛兵が建物の内部に入ったので、トイレ男もそれに続く。建物内部では前衛兵が他の衛兵達に横柄な口調でトイレ男に就いて言っており、トイレ男は彼らに軽く会釈した。その間に右衛兵はそんな衛兵達の間を摺り抜け、奥に有る階段に足を掛けたのでトイレ男はその後を追う。右衛兵は前衛兵と違いこまめに後ろを振り返って速度を調整してくれるので、置いて行かれる様な事は無かった。二人は二階へ登り、少し廊下を歩いた後或る部屋に入った。
「ここが君が今夜を過ごす事になる部屋だ。ベッドが無くてごめんよ、流石に泊りは想定してないんだ。衛兵専用の仮眠室から毛布だけは持ってくると約束しよう。誓約を立ててもいい……そういえば、君の事は何と呼べば?」
「……………………」
【『トイレの使徒』とでもお呼びください】
「トイレの……使徒? う、うーん、解ったよ」
右衛兵はトイレ男を苦手には思いつつも彼を突き放そうとはせず、寧ろ心理的な距離を近付けようとしていた。トイレ男はそんな彼の姿勢に深いありがたみを覚えた。そしてそんな自分に既視感も覚えた。
部屋の造りはシンプルだった。中央に机が有り、それを囲う様に三つの一人用ソファが有る。それ以外の物と言えば壁際に寄せられた棚ぐらいで、如何にも殺風景でこれまた既視感の有る部屋だった。若しかしたら、記憶を失う前の自分はここに縁の有る人物だったのかも知れない。
既視感に就いて紙に書いて右衛兵に伝えると、彼はうーんと唸りながら、
「残念ながら、僕は君に見憶えは無い。ただ僕もずっとここに居る訳じゃないし、君が見掛けによらず年寄りで、僕がここに配属される前にここを訪れた可能性も有る。取り敢えず、ここに来たのなら記録が残されている筈だから、後で夕食を取りに行く序でに記録を漁ってもらう様頼んでおくよ。何せ夜は皆暇だから」
と答えた。
「因みに、どれぐらい前かは判る?」
【すみません、判らないです】
「いやいや、謝る必要は無いんだよ。君は悪くな……いや、記憶が無いのが原因なんだから、記憶を失った理由如何によっては君が悪いという事になるのか。まぁ疑わしきは罰せず、君が気にする必要は無い」
少し考え込みながらも、結局は手を振りながらそう言う。トイレ男はそんな右衛兵の言う事を真に受け、気にしない事にした。
「じゃ、僕は飲み物を持ってくるよ。君はそこに座ってて」
【解りました】
「あー、そういうジェスチャーで意味が伝わる様な事は書かなくていいから。紙の無駄だし、君も面倒でしょ?」
言われみれば確かにそうだったので、頷いて了解を示した。右衛兵は満足気にニッコリと笑い、退室した。
「……………………」
トイレ男は指
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