決意の章
03rd
焦燥
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成程、理に叶った考えだ。トイレ男としてはいつか記憶が戻ると信じたいが、戻るまでの間必要最低限の常識も無い侭で居るのも怖い。トイレ男はこの本を読む事にした。
「……………………(首を横に振る)」
「お、やる? なら行こうか。先ずこの最初のページは目次と言って、」
【それは判ります】
「あ、そう? なら次の?」
二人は協力して読み進めていった。
最初の方はトイレ男でも憶えている様な事が大半だったが、後の方に行くに連れてトイレ男の記憶に残っている物は減っていったので、ページが捲られる速度は少しずつ遅くなっていった。
「それでここは……あ」
「?(首を傾げる)」
或る時、右衛兵が唐突にそう解説を中断したのでトイレ男は首を傾けた。
「そろそろ夕食の時間だ。待ってて、ウチの料理人が腕を振るいに振るった成果を見せてあげるから」
そう言って、右衛兵は退室した。
トイレ男は右衛兵が居ない間に少しでも読み勧めようと本に目を落とした。だが、一度集中が途切れてしまった所為か、先程までの様に没頭する様な事はできなかった。それだけでなく例の焦燥も戻ってきた。一体全体何を危惧しているのかがさっぱり判らない焦燥だ。唯そこに在るだけで、トイレ男に何の益も齎さない焦燥?トイレ男はそれに、強い苛立ちを覚えた。
「おーい、トイレの使徒くん。悪いがドアを開けてくれないか、両手が塞がっているんだ」
本も読めず只唯イライラするだけの時間が暫し。それを過ぎると、扉の外からその様な声が聞こえてきた。トイレ男は立ち上がってドアの下まで歩き、それを開ける。
「ふぅ、ありがとう。そしてお待たせ」
右衛兵が運んできた食事は一つの主食と複数の副菜で構成されている様だった。
「……………………?(首を傾げる)」
トイレ男はその内、ヤケに目を引く一つを指差しで首を傾けた。『これ何ですか?』のジェスチャーだ。
ジェスチャーの意味を正しく受け取った右衛兵は、
「あぁ、これはミートボールだよ」
そう答えた。
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