第三部 1979年
新元素争奪戦
バーナード星爆破指令 その4
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ドイツは、どれくらい外国に金を預けてるんだ?」
経済について、不勉強な事をマサキは隠さなかった。
これはマサキ自身が学者として、誠実であろうとする態度の一つだった。
「金保有量の6割強よ」
ココットがぶっきらぼうに答えた。
「この国が生き延びるためにはそうするしかなかったの……」
この時代の西ドイツは、常にソ連と東欧諸国の軍事侵攻を恐れていた。
かつてベルリン陥落で起きたプリアモスの財宝の強奪事件の再来を畏れ、外貨準備の6割強を米英仏の参加国に分散して保管することにした。
3400トンに及ぶ西ドイツの金塊の内、45パーセントにあたる1500トンが米国内にある。
細かく言えば、ニューヨーク連邦準備銀行の地下室とケンタッキー州にあるフォートノックス基地内の米連邦政府金庫に預けている。
そして、英国のイングランド銀行に13パーセントに当たる450トンを、仏の中央銀行に11パーセントに当たる374トンをそれぞれ分散して保管してある。
西ドイツ財務省主計局の審議官であるコッホ財務審議官が、能面の様な顔を歪ませていった。
彼は、シュミット内閣のハンス・アーペル蔵相の時に、対米交渉に参加した経験の持ち主だった。
外交上の配慮から、金の買い増しを断念した経緯を詳しく説明してくれた。
「実は西ドイツ政府も無策ではないのです。
もしものことに備えて、外貨準備高の一部をドル建てから金にかえようと、ひそかに金の買い増しに動いたことがありました。
その事を聞きつけた米国の財務次官が、ボンにまで乗り込んできたのです」
挙式後に知った事だが、クリステル・ココットという名前はBNDから貰った偽名で、クリストル・コッホというのが本名だ。
今話しているコッホ財務審議官は、ココットの父だった。
ドイツ人の姓は基本的に父方の姓を名乗るのが一般的なので、祖父とされるゲーレンと姓が違うのは何かあるのだろう。
マサキは金準備高の話が終わった後に聞こうと、疑問を後回しにした。
「それは今回の問題ではなく、注目しなければならないのはニューヨーク連銀に預けられた金の信用性なの」
ココットは小さい声で言った。
「タングステンの偽物でもすり替えられたら、分からんからな」
マサキのこの発言は、1971年のニクソンショックの時からある噂が元だった。
――ニューヨーク連銀の地下金庫にある金塊は、立入禁止を良い事にその全てがタングステンに金メッキをした贋物にすり替えられている――
実際、マンハッタン島にあるニューヨーク連銀の地下倉庫の7000トンの金は長年にわたり未調査である。
米国の民間団体、サウンドマネー防衛連盟によると、フォートノックス陸軍基地に保管されている金に対する包括的な監査は、1953年以降行われていないという。
(注:201
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