暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第三部 1979年
新元素争奪戦
バーナード星爆破指令 その4
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 バーナード星eのBETAを殲滅したマサキは、謎の脳髄が気になった。
研究をしているアトリエのような場所があるのかもしれない。
 そう考えた彼は、ゼオライマーに搭載された次元連結システムを使い、生命反応を探知した。
もし自分がBETAなら、生け捕りにし、解剖や生態観察に使うはずだ。
 この星のどこかに保存溶液に付けた状態で、人間が置かれいる可能性は否定できなかった。
害虫を駆除するためにその生態を研究するのは、一番初歩的で基本になる方法だからだ。

 米国製宇宙服―船外活動ユニット(EMU)―に搭載された酸素の量が、船外での活動限界である6時間に近づいて来たところ、不意に通信装置のブザーが鳴り響いた。
 マサキは身を強張らせた。
美久が何かを発見した合図だ。 
 宇宙服の背にある有人操縦ユニットを操作し、120キロのスーツを動かす。
2つのハンドコントローラーを使用して操縦し、背面のタンクにある冷却高圧窒素ガスによって推進する仕組みだ。
この装置により、宇宙飛行士は宇宙船から離れた場所で船外活動を行うことができる様になった。
 美久の報告は驚くべきものであった。
それは3000にも及ぶシリンダーの中に、人間の脳と脊髄が保存されているという話だった。
 そのほとんどがすでに無反応だが、わずか20個ほどのシリンダーからは熱源が認められる。
培養液の中を次元連結システムを応用した装置で確認してみれば、かすかな生命反応が見られた。
 マサキは、ここで躊躇した。
この脳髄だけとなった人間を、次元連結システムを応用した記憶複製装置を用いれば、どのような経緯でこうなったか、完全に解明できよう。
だが、自分が秋津マサトに対して記憶を植え付けたように、健康な予備の人間を用意するしかない欠陥が横たわっていた。
 美久の様なアンドロイドを作って、そこに記憶を入れれば、機械の体であることに絶望を抱き、発狂して死ぬ可能性が高い。
 もしかしたら数年、何十年もここに捕らえられている可能性がある。
皮膚や骨、内臓を除去され、脳と脊髄だけになって生かされ、幻覚を観させられているのかもしれない。
 BETAの手による死の世界の中を、幾度となく輪廻転生し、その業に苦しめられているのだとしたら……
ならば、せめてものの慈悲として、その輪廻を断ち切り、苦界から脱出させてやるべきではないか。
 マサキは、重重しい声で言った。
「消せ!」
 美久の目は驚きを持った。
すでにBETAの残虐な血祭りを見てきたマサキは、ひどく(たかぶ)った語調で彼女に命じた。
「この宇宙から、星系ごとバーナード星を消すのだ!」
 それは、土星の衛星ガニメデ爆破のような生やさしい物ではない。
恒星であるバーナード星と、その周囲に存在するいくつかの衛星や攻勢を丸
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