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冥王来訪
第三部 1979年
新元素争奪戦
バーナード星爆破指令 その2
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スを相克する価値観を求める声が上がった。
その為、相次ぐ凄惨なテロや言語を絶する内ゲバ事件を目の当たりにし、赤軍派を過激な極左暴力集団と蔑視した日本と違い、西ドイツではその多くが同情的だった。  
1968年の学生運動は、古い価値観を壊し、ドイツに本当の民主主義を導いたなどと、今でも大真面目に信じられている。
 日本もマルクスレーニン主義者らが日夜諸外国によって作られた自虐史観を児童に刷り込んでいるが、ドイツでも同じなのだ。
いや日本以上に過激化したのは、1918年に君主を追放し、精神的な中心を失った国の悲劇なのかもしれない。

 午後2時の閉庁間近、バイエルン市の戸籍役場に数名の男女が集まっていた。
これから、結婚式を行うためである。
 ドイツに居住実体のないマサキは、本来ならばボンの戸籍役場まで行って予約をし、登録を行う必要がある。
 だが、ゲーレンの政治力でなんとか滑り込む形で強引に行ったのだ。
本来ならば、半年はかかる審査や手続きを、わずか数時間でパスした形だ。
 執行人の講話を聞きながら、マサキの気持ちは沈んでいた。
半ば冗談で言ったことを強引に行ったゲーレンに呆れ、己の失言に後悔していたのだ。
 長袖の第2種夏服のマサキの傍に立つココットは、緊張で打ち震えていた。
冴えないライトグレーの婦人用サマースーツ姿の彼女は、これからいう誓いの言葉で悩んでいた。
 間違った文句を言って、結婚出来なかったらどうしよう……
 ココットの悩みは、杞憂だった。
はい(ヤー)という返事だと、指輪交換だけだったからだ。
 儀式は15分程度で、婚姻届けに署名するという流れである。
花嫁、花婿付添人にも署名をしてもらい、終わりというあっけのないものだった。

 マサキは、この期に及んで違う事を考えていた。
この世界の住人の倫理観というのは、元の世界とは違うらしい。
彼は、今更ながら後悔をするのだった。
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