第137話『潜入作戦A』
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「どうなってんだ、ありゃ……」
背後の様子を窺いながら、大地は全速力で鏡男から逃げていた。
大地はクラス一、いや学年一の俊足の持ち主と言っても過言ではない。そのスピードは"風の加護"状態の晴登すら凌ぐほどで、例え魔術師が相手でもそう簡単には追いつかれない。
だから晴登が足止めしている内に姿を晦ますことができれば、その後でゆっくりと優菜を探すことができる。
しかしそれでも、今しがた廊下を塞ぐかのように迫る鏡の壁の隙間を、間一髪で晴登がくぐり抜ける姿を見て、絶対に勝てないと悟った。もはや現実の常識が通用しない。魔術とは、そういうものなのだろう。
「任せたぞ、晴登」
魔術師同士の戦いに、部外者の自分が口を出す余地はない。ここは晴登に託し、自分は前だけを見据えるべきだ。
「……にしても参ったな」
そう決意したのも束の間、大地は弱気な言葉を漏らした。
というのも、鏡張りの現実空間と違って、この空間は左右が反転しているだけで、元の学校と同じ景色だ。だから基本的には迷うことはない。
──普通なら。
度々話題に上がるが、大地は筋金入りの方向音痴だ。見知らぬ場所はもちろん、知っているはずの場所ですら迷うことは日常茶飯事。同じ学校でも左右が逆転しているならば、それはもはや未知のダンジョンと変わらない。
「目的地決めてもしょうがねぇな……」
ならば、考えるより動くほうが早い。
「うっし、しらみ潰しに探すか」
頬を叩き、弱気になる気持ちをリセット。方向音痴という弱点は今さらどうこうできる問題ではない。ならば、得意なことでカバーするだけだ。
「うおおおお!!!!!」
自慢の俊足をもって全速力で廊下を駆け抜ける。
サッカーで鍛えた脚がバネのように弾み、廊下を跳ぶように疾走する。その度に掲示物が風に煽られ、カタカタと揺れた。
しかし闇雲に走っている間も、横目でしっかりと教室の中を確認するのを忘れてはいない。落とし物ひとつ見逃すつもりはなかった。
──そうして廊下を走り回っていると、人影を見つけるのに時間はかからなかった。
「……誰かいる」
足を止め、曲がり角の壁に身を寄せる。慎重に顔を出して様子を窺うと、二人の人物がこちらに背を向けて歩いていた。
「誰かが誰かを連れていってる……?」
後ろの一人が前の人物を引っ張るようにして進んでいる。まるで警察が犯人を連行しているかのような光景に、大地はすぐに察した。
「ってことは、複製体か……!」
誰かを攫うのは、複製体の役割のはず。つまり、今まさに誰かが連れ去られている最中ということだ。
「助
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