九十五 会議は踊る、されど
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に天才である兄とどこでもいつでも比べられて肩身が狭い思いをしてきた。
けれどそれ以上に弟は兄を尊敬していた。憧れだった。
乗り越えられない才能の差と壁に落胆しつつも、心のどこかでいつまでも己の目標であり壁で居続けてくれることを願っていた。
大好きな兄だった。
「だからこそ生かしてやる────俺の為に」
あの時、雲間から覗く月光の中、一瞬見えた兄の顔。
唇を噛み締め、苦々しく眉間に皺を寄せ、眼を伏せたあの、酷く辛い顔は見間違いではなかった。
「この俺を殺したくば、」
顔を背け、弟に背を向けた兄がどんな表情を浮かべていたか。
「恨め、憎め。そして────醜く生き延びるがいい」
本心を押し殺し、肩越しに振り返った兄の瞳に秘められた真実を見極めるべきだった。
「逃げて逃げて────生にしがみつくがいい」
生きろ、と。
兄である己への復讐を糧に生き延びてくれ、と。
「そしていつか俺と同じ“眼”をもって────俺の前に来い」
自分と同じくらい、いやそれ以上強くなって、生きて成長した姿を見せてくれ。
真意が聞こえてくる。
兄の心の声が聞こえてくる。
最後に肩越しに振り返って見せてくれた写輪眼の紅き光。
かつては冷たさしか感じられなかったその情景が、今ではサスケの胸の内にあたたかい光を落としてゆく。
うちはイタチはひたすら信念を貫こうとする様は正に模範的な忍びである前に、兄であった。
唯一無二の弟を想う、心優しき兄だった。
嘘と偽りを纏い、本心さえも包み隠す孤独な鞘の兄と、復讐の炎に燃える抜き身の刀である弟。
あの時、和解したあの時から、うちはサスケは。
兄を追い続けていた。憧れと尊敬を以って。
兄を追い続けてきた。恨みと憎しみと共に。
兄を追い続けている。哀と辛苦、愛を胸に。
まだ兄を憧れていた幼き自分が、再び兄を尊敬し始めているサスケへ無邪気に笑いかける。
その声は今の己の言葉と重なって同時に口から放たれた。
「「真実を知るべきだ」」
かつて真実から眼を逸らし続けてきた愚かな自分自身にも。
そして木ノ葉の里の闇を知らぬ者達にも聞かせてやる為に。
だから問い質す。
先ほどから頑なに口を噤む忍びの闇へ。
「おまえを含む木ノ葉上層部の命令で、うちはイタチにうちは一族を抹殺させたのは本当か?」
「……………」
「沈黙は肯定と見做す」
眼光鋭く睨まれ、志村ダンゾウは渋々口を開く。
「うちは──サスケか」
見覚えのある面影。
うちはイタチに似た容姿の者が殺意を露わに自分を睨んでいる。
同時にダンゾウは落胆した。
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