第二章
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「そうしたが」
「見事にです」
「咲き誇っているか」
「ご覧になられているままに」
「それではな」
大臣に満足している顔で応えてだった。
皇帝は妃を呼び共に都を歩いた、宮殿の中も庭もだったがそこを出てもだった。
多くの色とりどりの花達が咲き誇っていた、妃はそれを見て言った。
「素晴らしいです、至るところで花が咲いていて」
「いいものだな」
「はい、まるで」
妃はうっとりとした顔で微笑み話した。
「空の中にある様な」
「空のか」
「はい」
そうだというのだ。
「まるで」
「そういえば」
皇帝は妃に言われ気付いた、それでだった。
周りを見回した、すると都は山の上にある。そこにあるとだった。
「都は空の中にある様だな」
「浮かぶ様に」
「そうだな、そして」
皇帝はさらに言った。
「そこに花が咲き誇っているとな」
「尚更ですね」
「そう思える、空の中に花で飾られた都が浮かんでいる様だ」
「まさに」
「これ程美しいものはない」
皇帝も微笑んだ、そのうえでの言葉だった。
「まことにな」
「左様ですね」
「妃を喜ばせる為だったが」
見ればだ、都にいる者全てがだった。
花達を見て笑顔になっている、皇帝はそのことを見て言った。
「民達が喜んでいる、常に政治でそうなる様にしてきたが」
「お花で飾ってもですね」
「そうなる、ではこれからもな」
「都をお花で飾っていきますね」
「そうする、そしてインカの全ての街や村をな」
「お花を多く植え」
「そうしてだ」
そのうえでというのだ。
「飾っていこう」
「それがいいです。帝国を花で飾りましょう」
「これからもな」
皇帝は妃の言葉に頷いた、そして都だけでなく国全体が様々な花で飾られた。高い山々にある国なので人はまるで空に浮かぶ花の街が連なっている様に見えた。
インカ帝国のかつての姿である、だがその姿を知る者は今はいない。ただ遺跡が残っているだけだ。そこに暮らした人の息吹も花も今はない。
空中花都 完
2025・1・13
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