第一章
[2]次話
海と雨
ビーチは最高だった。
中学二年生の新海主男は友人達と一緒にいて笑顔で言った。
「やっぱりな」
「海はいいか」
「そう言うんだな」
「お前水泳部だしな」
「ああ、思いきり泳げてな」
細面の褐色に焼けた顔で言う、目は大きくキラキラとしていて眉は太い。黒髪は短く背は一七〇位で痩せている。
「日差しは奇麗で海の家もあるしな」
「そこで食えるしな」
「海で食う焼きそばとかカレー美味しいな」
「アイスとかかき氷も」
「ジュースやコーラもな」
「だから好きだよ、しかもな」
友人達にこうも言った。
「水着のお姉ちゃん達もいるしな」
「水着のお姉ちゃん見放題だしな」
「ビーチじゃ水着になるものだしな」
「何の問題もなく見られるからな」
「ビーチだと」
「この街に生まれてよかったよ」
地元民であることも話した。
「本当にな、それじゃあな」
「ああ、今日もな」
「思いきり泳いでな」
「焼きそばとかも食って」
「奇麗な水着のお姉ちゃん達も見ような」
友人達も頷いてだ、そうしてだった。
彼等は夏の海を満喫した、休日はそうした。だが。
夏が終わってだ、ビーチも終わり。
秋になって冬になった、するとだった。
青かった海は鉛の様に黒くなった、しかも。
天気も悪い、新海はその海を学校帰りに友人達と一緒に見ていった。部活帰りでもう夕方も終わろうとしている。
「俺冬の海はな」
「嫌いか」
「そうなんだな」
「今の海は」
「色が鉛みたいでな」
その海、堤防の向こうの道を歩きつつ見て言った。
「暗くて沈んでいてな」
「波も荒れてな」
「同じ海とは思えないな」
「夏と冬でこうまで違うんだな」
「同じ海でも」
「部活で泳げても」
プールでというのだ、室内の温水プールなので冬でも泳げるのだ。
「けれどな」
「冬に海は無理だからな」
「絶対に風邪ひくな、泳いだら」
「波も荒いし」
「泳げたものじゃないな」
「だから嫌いなんだよ」
新海はまさにと答えた。
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