決意の章
02nd
罰
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この世界の夕は短い。
ついさっきトイレ男を衛兵の詰所に届けた時は真っ青だった空も、今は闇色に染まってしまっている。空が赤かった時間など、道端で会った知り合いと少し立ち話をするのと同じぐらいしか無かった。
「〜〜♪」
そんな暗闇の中で、巨女は路地裏を歩いていた。
夜は彼女が本格的に活動を行う時間帯である。この街を皮切りに世界中の悪の撲滅を目指す彼女は悪党は夜中に動く物だと知っている。暗く人通りも減った夜の街は、人に見られるのを嫌がる悪者達の時間だ。
「♪…………むっ」
そこで地味に夜目が効く巨女は見た。
一人の男が、裏口から建物の中に入ろうとしているのを。
泥棒だ、と巨女は勘付いたが、まだ確証は無い。家の住民や家主の知り合いかも知れない。この段階でとっちめてしまえば、無辜なる一般人を傷付けてしまい衛兵にいつものとは違う厄介になってしまう事に繋がり兼ねない。
よって巨女は気配を消して男に躙り寄った。どうやら男はドアを開けるのに苦戦しているらしく、ガチャガチャと何度もノブを回しては鍵穴に針金を差し込んでいる。あからさまに怪しい。
「やぁ!」
「ッ!」
男の背後まで到達した巨女は元気良く彼に声を掛けた。驚いた男は肩を飛び上がらせつつ振り返る。
「こんな時間にこんな所で何してるんだい?」
「糞ァ!」
どうやら男は悪党で合っていたらしい。
犯行現場を見られた(男から見ればそんな確証は無いが、男は咄嗟に早栃りしてしまったのだろう)事によりパニックに陥った男はズボンのポケットからナイフを取り出し、それで以て巨女に切り掛かる。目撃者の始末に躊躇が無い?この男は相当やさぐれている様だ、と巨女は考えた。
暗闇の中、やさぐれ男はあまり視界がはっきりとしていないのかも知れない。巨女は微妙に狙いのズレた一撃を振るう右手を掴み取り、刃が自分に刺さらない様注意しながら男が持っていた勢いも使って彼を投げた。一応男の勢いを使いはしたが、実際は投げるのに必要だったエネルギーは巨女の筋肉から賄われていた。
「かはっ!」
背中を地面に強打したやさぐれ男は強く息の塊を吐く。
巨女は携帯しているロープで素早く彼を縛る。やさぐれ男は抵抗したが、巨女の圧倒的な筋力の前には無力であった。一般的な成人男性では巨女には敵わないのだ。
「ふぅ」
一仕事終えた、とばかりに巨女は額の汗を撫でた。それからこの男を衛兵に突き出す前に家の住民に注意喚起をしておこうとドアをノックしようとするが、
「?大人しく警告に従う気は無かったの?」
「…………」
背後から聞こえたその声に振り返った。
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