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世界はまだ僕達の名前を知らない
決意の章
02nd

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 やさぐれ男が出した声ではない。彼はいっそ不気味なまでに沈黙を保っている。声が聞こえたのは上から?奇しくも、巨女がチンピラ達に奇襲を与えたのと同じ方向からだ。

 その方向に視線を向けると、朧気にだが、一人の人間が建物の屋根の上に立っている様だった。そういやコイツは前会った時も上に居たな、と巨女は思い出していた。

「聞こえてる?」

「あぁ、聞こえているよ。そりゃもうバッチリと」

 屋根の上の人?声質からして女。女にそう答えつつ、巨女は全身の筋肉を意識していた。

 巨女が前にこの女と会ったのは、五日程前である。

 この女はいつもの様に悪党狩りをしていた巨女の前に現れ、次の様な言葉で巨女を脅した。

 『正義のヒーローごっこはその辺にしておきなさい。これ以上は命に()()()()()わ』。

 勿論巨女はごっこ遊びで悪党狩りをしている訳ではなく、命の危険なんていつも意識している事なのでこの警告を無視していた。一応衛兵に伝えはしたが。

「質問に答えると、私にそちらの警告を聴く気は一切無い。私の目標は世界中の悪を根絶する事。今はその一歩としてこの街の悪の根絶を目指している。大事な一歩目で躓く積もりなど毛頭無い」

「そう。過分な目標を持っているのね」

 女は巨女の動機に興味は無い様だった。

 女は屋根から跳び降り巨女と同じ高さまで来る。ここで漸く巨女は女の姿をぼんやりとだが見る事ができた。黒い、装飾過多なワンピースに身を包んだ、恐らく一〇代後半の少女だ。

「貴方は私達のテリトリーを侵した。最後通牒も跳ね除けた。これから与えられるのはそれに対する罰?自らが犯した罪の結果、身を以て受けなさい」

「ッ?!!」

 相手が少女である事など関係無かった。この女は悪、それもそこそこ深い所に居そうな悪だ。相手の戦力が見た目通りだなんて信じられない。巨女は突撃を開始する。

 大きく拳を振りかぶり、黒女の顔面を狙って振り抜く。黒女はそれを柔軟な体を大きく反らせて避けた。彼女はその侭両手を地面に突き、脚を振り上げて巨女の顎を狙う。

「効かぬッ!」

 しかし小柄な黒女の、勢いの弱い蹴りなど顎を打たれても巨女のダメージにはならない。巨女は黒女の攻撃を無視して彼女を掴みに掛かる。

 一方の黒女は迫り来る巨女の手を無視し、早口だが巨女にも聞こえる声量で何事かを言う。

我が論を聴け、世界(エウレカ)。人を侮辱し冒涜した人は女の蹴りを受け吹き飛べり。女たる我を侮辱し、我に蹴られしこの女、如何にか吹き飛ばざるや?」

 直後、巨女の体が何者かに蹴られたかの如く吹き飛ぶ。黒女はその間に体勢を立て直し、ポケットに入れていた石を投げ付ける。

「|我が
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