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世界はまだ僕達の名前を知らない
決意の章
02nd
恐喝
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から離れ、代わりに彼に呼ばれた小男がトイレ男に躙り寄る。

「さぁさぁチビれチビれチビれぇ……立派な男が漏らす小便程情けねぇモンは無ぇもんな? ……ってもう漏らしてんじゃねぇか!」

 下手すると先の大男よりも嗜虐的に嗤う小男だったが、トイレ男は彼にそれ程の恐怖を感じなかった。彼はまだ、声を出す事の恐怖に支配されていた。いつの間にかチビっていたが、それに気を回す余裕なんて、無い。

「へっへぇ……先ずは上の服を剥いで……」

 ゴッ。

 意気揚々と手をワキワキし始めた小男だったが、後方から響いた謎の音に振り向いた。

 大男が何かした……訳ではない。大男も大男で不可思議そうに音源の方を見詰めている。

 音の正体は鞄だった。肩に掛けるタイプのショルダーバッグ、丸々と荷物で膨らんだそれが袋小路の入口に無造作に置かれている。今の音は、何者かがバッグを投げ、それが地面に落ちる音だったのだ。

「……兄貴」

「わぁーってる。十中八九罠だ。俺が見るから、お前は警戒しとけ」

「うっす」

 どうやら鞄を無視するという選択肢は有り得ないらしい。鞄の隙間からキラキラとお金が見えているのもあるだろうが、大きな理由はこの鞄を放った奴が誰であろうと自分達なら勝てるという無根拠な自信であった。

 トイレ男は一旦放っておかれ、二人の意識は鞄とその周辺に集中される。トイレ男はまだ心臓の動悸が収まっていない。

 大男はジリジリと謎鞄に寄った。鞄の周囲に仕掛けが無いかどうかを確認するだけでなく、時折前方や後方にも目を向けている。小男は小男で微妙に移動し、大男の死角となる部分の安全を確保している。

 大男は鞄の下まで辿り着くと、直ぐには手を伸ばさずその周囲を回り始めた。全方位から罠の有無を確認するのである。一周して目に見える罠が無い事を確認した大男は、少し離れた場所から精一杯腕を伸ばして鞄の紐を掴んだ。そして少しずつ、少しずつ引っ張ってゆく。ジリジリ、ジリジリ。鞄は少しずつ動き、軈て大男の下まで辿り着いた。大男はそれを抱え上げ、罠なんて無かったと大袈裟に肩を竦める。それを見た小男も警戒のし損だと残念そうに肩を落とした。

 ?だから、直後に起こった事は、彼らに取って完全に予想外であっただろう。

 上方?大男も小男も完全無警戒であった方向から、大男に向かって大質量の塊が落下したのだ。
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