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外道戦記ワーストSEED
十四話 天秤が揺れる世界@
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ム兵器までを網羅する、耐性試験の結果の書類の山に埋もれながら、彼は眼の前の設計図のパラメータを調整し、机上の電子デザインボードに書かれた設計図を消し、再定義し、新たな図面を引いていく。

 右上に書かれたリテイクナンバーは、一か月足らずで既に3桁にのぼっていた。

 材質についても拘っているのか。

 カタフラクトの成果として送られた、宇宙空間でしか生成されない機密のフェイズシフト用の合金は勿論、クォーターガンダム用に少量生成された月面で取れたチタン、仮名ルナチタニウムすら材料として使い、堅固な『何か』を生成していた。

 ありとあらゆる鉱物や加工物、またカタフラクトの残骸から得たのか何らかの電気的刺激や液体による形質変化など、ありとあらゆるパターンをその特製のパソコン上にアップし、何かを試しては再定義していく。

 既に何徹かしているのか、目は血走っていた。

 鬼気せまる様子で、眼前のパラメータを操作し、調整する。

 普段の彼、ふくよかな顔に髭をたたえた温和な彼の姿はもはやなく、頬がこけ、もはや悪鬼の様相であった。

 だが、彼は止まれない。

 彼の背中を押し続ける録音された音声が、彼自身の手で小型パソコンによりエンドレス再生される。
 
 「緊急通達!CP(コマンドポスト)よりLT(レーザー通信)! C4(コーラルフォー)より各機へ。A1エンゲージ! 繰り返す、A1(アンスリウムワン)、接敵!」

「C1(コーラルワン)、了解。C小隊、全機通達の通りだ。今度こそ????死なせちゃならん、急行するぞ!」

「C2了解! カタフラクト乗りはみんな死にたがりだからな! カッコいい真似ばっかさせてやんねっつうの!」

「C3、了。宇宙人は皆殺し。宇宙人に殺されるなんて許さない。これ以上、これイジョぅうあアアァ?……ッ!」

「C4より通達、艦隊より後続のメビウス隊も要撃に上がっています。我が隊初撃はジンを狙い一撃離脱せよとの指示です。C1どうぞ」

「まずはアンスリウム(カタフラクト)隊にたかっているジンに突っ込む! ここで1機でも減らせるかが分水嶺だ。艦隊の攻略は後続に託す。まずは死なせちゃならんのだよお坊ちゃん嬢ちゃんたちをなあ! 」

カタフラクトの残骸から得た勇者たちの断末魔。


その声が、どんな名声や地位や財を得ても、彼を地獄に引き戻し続けていた。


天秤が揺れる世界@ 了

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