十四話 天秤が揺れる世界@
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シャイン博士。
正史の世界では、物資の不足などにより企画倒れに終わった実験型モビルスーツ、『カタフラクト』を生み出した俊英。
彼はユーラシア連邦より、多くの称号を得て、当然、『次の傑作』を製造してもらえるよう、多大な資金も援助されるようになった。
優先される配給、子供や妻にはガードマンが24時間張りつき、安全を担保。
この世界では貴重となった、自然物による料理を毎日渡される厚遇っぷりである。
正に、ユーラシア連邦内でも、数少ない成功者のはずであった。
だが……この部屋を見て、ほとんどの人は彼を成功者とは思わないだろう。
転がる栄養剤、眠気覚ましの空瓶。
砕けた時計に、破られたカレンダー。
明らかに異常である空間で、絶え間なく打ち込まれるタイプ音が、かえってその異常さを表していた。
「シャイン、もうやめろ……」
「止めるな、私の下らない金儲けのための論文が『コレ』を引き起こしたのだ」
シャイン博士の肩を割れ物を扱うかのように触れながら、もう一人の男がそう声をかけるも、シャイン博士はそれを振り払う。
ワイルド博士。
未だ完成しない『Gressorial Armament Tactical(歩行型戦術兵装)』を解決するため、別アプローチで完成を補佐するために召集された彼は、その得意分野によりヘリオポリスの本計画とサブ計画である世界樹コロニーの『Trial Enemy Armament(対敵性兵装試験)』を往復する中、見る影もない親友の変貌ぶりに頭を悩ませていた。
『宇宙の彼方から、レーダーや電波での通信を遮断できる特殊兵器を持ち、加えて人型兵器で襲ってくる宇宙人が居た場合、それに対抗できる兵器をデザインせよ』
その問いかけに『敵方の人型兵器のカウンター兵器としてデットコピー品をガワだけでも生成し、自身が研究中の補佐型AIを載せて動かすことで、敵勢力のかく乱を誘発する』という論文で合格した。シャイン博士以外唯一の論文合格者。
地球上でAIのシステム構築で彼を超えるものはいないと言われ、AIを通してありとあらゆる分野で助言を行ってきた彼だが、親友の慰めと完全新機軸の武装、モビルスーツには、有効な助言を与えられずにいた。
転がるゴミの処分をしながら、ワイルド博士はシャイン博士の『執念』の欠片をみる。
部屋の中心のホワイトボードに書き殴られた『ワシが殺した、もう死なせない』という文字
その決意表明通り、シャイン博士は報酬により渡された広い研究室でひたすら『何か』を作るのに躍起になっていた。
書き殴られた、何かのパーツ。
名前は辛うじて見えるのは、〇〇シャッターだろうか?
酸・爆破物、果てはビー
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