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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第3章 高校3年生
わかば園と両親の死の真相 A
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 ――その週の土曜日、愛美は純也さんとのショッピングデートを思う存分楽しんだ。
 やっぱり自分のために彼のお金を使わせるのは忍びないとは思ったけれど、彼なりに落ち込んでいた自分を励ましてくれようとしている、その気持ちは嬉しかったから。

 彼も愛美のために何かできることが嬉しかったらしく、愛美が「これ欲しい」と言えばどんな物でも買ってくれた。とはいえ、愛美もそんなに高価な物をねだったわけではなかったけれど。

 そして、愛美にも分かった。彼がそうしてくれたのは、普段愛美を欺いていることに彼自身も苦しんでいるから、その罪滅ぼしでもあるのだと。

(いつか、彼の口から本心が聞けたらいいんだけどな……。「わたしはちゃんと分かってたから、もう苦しまなくていいんだよ」って彼に言ってあげたいな)

 二人でカフェで一休みしながら、そういえば、彼の筆跡を見たことがなかったなと愛美は思い出す。
 連絡を取り合うのはいつも電話かメッセージアプリでのやり取りだから、そもそも彼の書いた文字を見る機会がなかったのだけれど。もし文通でもしていたら、彼はどうやって筆跡をごまかす気でいたんだろう?

(まあ、あしながおじさん≠フ直筆だって一回しか見たことなかったし。あれだけじゃ筆跡を変えたかどうかわたしにも分かんなかっただろうけど)

 彼のあしながおじさん≠ニしての直筆を目にしたのは、インフルエンザで入院していた時にお見舞いとして送られてきたメッセージカードだけだった。あの筆跡は、わざと変えてあるように見えなくもなかったけれど……。プロの鑑識職員でもない限り、本当に筆跡を変えたのかどうかを鑑定することはできない。

(……そういえば純也さんって、タワマンに住んでるんだっけ。あー、住所見て気づくべきだった)

 あしながおじさん≠フ住所――というか末尾の部屋番号は二七〇五号室。つまり、タワーマンションの部屋番号でしかあり得ないのだ。珠莉から「純也叔父さまはタワーマンションでひとり暮らしをしている」と聞いた時にピンときていてもおかしくなかったのに。

(わたしってけっこう抜けてるのかも……)

「――愛美ちゃん、どうかした? なんかずっと黙りこくってるけど、疲れちゃったかな」

 純也さんに話しかけられていることにようやく気づいた愛美は、考えことから抜け出した。

「……えっ? そんなことないよ!? 大丈夫、ちょっと考えごとしてただけ」

「そっか、ならいいんだけど」

「……それより純也さん。わたしの両親が亡くなったっていう、十六年前の十二月って一体何があったの? 純也さんはどうして知ってたの?」

 愛美はずっと気になっていたことを、彼に訊ねてみた。

「俺も確信があって言ったわけじゃなくて、何となくそうじゃない
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