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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第3章 高校3年生
わかば園と両親の死の真相 A
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は希望だったから」

「はい……!」

 両親がどうして自分のことを施設に預けたのか分からなかった愛美は、その事情を知って改めて両親から愛されていたんだと分かり、胸がいっぱいになった。聡美園長に預けたのも、恩師である彼女を信頼していたからだろう。

「――ところでですね、相川さん。親戚が騙し取ったその見舞金の一千万円、私が全額彼らから取り返すことができたんですが。あなたはどうされますか? ここに現金で用意してあるので、この場でお返しすることもできますが」

 北倉弁護士がそう言って、大きな茶封筒を応接テーブルの上に置いた。かなりの厚みがあるそれには、百万円分の札束が十個入っているらしい。

「そんな……、こんな大金、受け取れません!」

 一瞬、「これだけあれば純也さんにこれまで出してもらったお金が全額返せる」とも思ったけれど、それでは筋が違う。彼に返すお金は、自分で作家として稼いだものでなければ意味がない。
 それに、まだギリギリ高校生の身に一千万円という金額は大きすぎる。

「いえいえ、これは本来あなたが受け取るべきお金ですから。どうぞ、お納めください。使い道はあなたに委ねますので」

「そう……ですか? ありがとうございます。じゃあ……」

 封筒を受け取った愛美は、中の札束を二つだけ取り出して自分の手元に置いた。そして――。

「これだけわたしが頂いて、あとはこの施設に寄付します。さすがに一千万円は金額が大きすぎるので」

「愛美ちゃん……、本当にいいの?」

「はい。この施設のために役立てて下さい」

「……分かったわ。ありがとう。この園の子供たちのために、大切に使わせてもらうわね」

 聡美園長は、笑顔で愛美が差し出した八百万円の入った封筒を受け取った。

「――では、私はこれで失礼します。相川さん、今日はお会いできてよかった。こんなに立派に成長されて……、天国のご両親もきっと喜ばれていることでしょう」

 北倉弁護士は用件が済んだようで、早々に席を立とうとした。

「こちらこそ、ありがとうございました。両親の最期がどんなのだったか、わたしもずっと知りたかったので。今日は貴重なお話を聞かせて頂けて嬉しかったです。それに、政府からのお見舞いのお金まで取り返して下さって。本等にありがとうございました」

 愛美は彼に丁寧なお礼の言葉を述べ、何度も頭を下げる。

(わたし、やっぱりお父さんとお母さんに愛されてたんだな……。で、園長先生は二人からすごく信頼されてたんだ。でなきゃ、まだ小さかったわたしを安心して託せなかったはずだもん)

 北倉弁護士の背中を見送りながら、愛美はそんなことを考えた。まさか自分たちが事故で命を落とすとは思っていなかっただろうから、本当に一時的にだ
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