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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第3章 高校3年生
わかば園と両親の死の真相 A
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かされたんですけど……。それじゃやっぱり、その夫婦っていうのが」

「はい、あなたのご両親で間違いないと。お二人のご遺体は幸いにも状態がよかったので、ここにいらっしゃる若葉園長が身元の確認をされたそうです。お二人は園長が小学校の教員をされていた頃の教え子だったそうで、卒業後にも交流があったそうなんです」

「えっ、そうだったんですか?」

 愛美は驚いて、聡美園長に向けて目を見開く。

「ええ、実はそうなのよ。あの二人は私の教え子だった頃から仲がよくてね、結婚式にも出席させてもらったわ。あなたのご両親は、子供ができなかった私たち夫婦にとって我が子も同然だったの。だから、事故が起きる二日前、『親戚の法事でどうしても愛美ちゃんを連れていけない』っていう二人の頼みを聞き入れて、すでに開園していたこの施設でまだ小さかったあなたを預かってたのだけれど……」

 そこまで話した園長が、涙で声を詰まらせた。

「……まさかその二日後に、あんな変わり果てた姿で再会するなんて……」

 たった二日前、元気な姿で別れた教え子夫婦とそんな形で物言わぬ再会をすることになった園長の気持ちを想像したら、愛美も自然ともらい泣きをしていた。気づけば、北倉弁護士の目にも涙が……。

「……ああ、すみません。――それでですね、ここまでは前置きで、ここからが本題なんです。ご両親を亡くされた幼いあなたは、お母さまの弟さんのご夫妻に引き取られることになったんですが……」

「わたし、親戚がいたんですね」

「ええ。ですが、そのご親戚が問題でして。二人は日本政府から被害者遺族に支給されたお見舞金目当てであなたを引き取り、見舞金を受け取った後はあなたへの育児を放棄して遊び惚けていたんです」

「…………! そんな……ヒドすぎる……」

 愛美は顔も憶えていないその叔父夫婦に対して、何ともいえない怒りがこみ上げていた。もしその二人が今になって「親戚だよ」と再び目の前に現れたら、彼らに何をするか分からない。

「それでね、一度あなたの様子を見に行った時にその事実が分かって、私が児童相談所に通報したの。そして、その親戚夫婦はあなたの養育権を?奪されて、あなたは一時的に預かっていたこの施設で暮らすことになったのよ」

「そうだったんですね。園長先生、その時に通報して下さってありがとうございます。その通報がなかったら、今のわたしはいなかったと思うから」

 愛美は改めて聡美園長に、育ててもらったことと命を救ってもらったことへのお礼を述べた。彼女の通報がなければ、愛美はその後無事だったかどうかも怪しいのだ。

「いいのよ、愛美ちゃん。あなたは私にとって孫も同然だって、さっきも言ったでしょう? 大事な教え子だったあなたのご両親を亡くした私にとって、あなた
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