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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第3章 高校3年生
わかば園と両親の死の真相 A
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悲しかったことも。

「――さて、行くか」

 門をくぐった愛美は、園長から電話で聞いたとおり、正面玄関ではなく来客用の玄関でスリッパに履き替える。そこに一足、男性ものの革靴が揃えて置かれていることに気づいて首を傾げた。そこでふと感じるデジャブ。
 ちょうど三年前の今ごろ、愛美はこのあたりであしながおじさん≠フあのヒョロ長いシルエットを目撃したのだ。あれは夜だったけれど……。

「……あれ? この靴、誰のだろう? 純也さんの……じゃなさそうだけど」

 彼の靴のサイズは二十九センチだけれど、この靴はそれよりサイズが小さいように見える。
 それに、珠莉から聞いた話では、彼がここを訪れるのは毎月第一水曜日だけらしいけれど、今日はその日ではない。

「誰か、他にお客様が見えてるのかな……?」

 その靴の持ち主が誰なのかは気になったけれど、愛美はとにかく園長室へ向かって進んでいく。

「――園長先生、お久しぶりです。ただいま帰りました」

 自分のデスクに座っていた聡美園長に声をかけると、応接用のソファーに腰かけている男性が園長と同時に愛美の方へ顔を上げたので驚いた。
 彼は四十代半ばくらいで、知的な感じのスリム体型。そして彼のスーツの襟には金色のバッジが光っている。

「おかえりなさい、愛美ちゃん。――ああ、こちらの方、紹介するわね。弁護士の(きた)(くら)先生よ」

「相川愛美さんですね? 私は弁護士の北倉と申します。あなたのご両親が亡くなった、十六年前のジャンボジェット機墜落事故の遺族救済を担当しておりました」

「……どうも。お名刺頂戴いたします。――あの、高校生作家の相川愛美です。名刺はありませんけど」

 名刺を受け取った愛美は、こちらも自己紹介をしなければと思い、丁寧に名乗って頭をペコリと下げた。
 
「愛美ちゃん、この弁護士さんが、あなたに大事なお話があるそうでね。――あなたからご両親の亡くなった理由が知りたいって手紙をもらった時に、ちょうどいいわと思って連絡して、今日わざわざ来て頂いたの」

「そう……なんですか。――あの、北倉先生……でしたっけ。わたしに大事なお話っていうのは? 両親の死とどんな関係があるんですか?」

 この先生は十六年前、事故の遺族救済を担当していたと言った。ということは、事故の後に愛美の知らなかった重大な何かがあったということだろうか。

「それをお話しする前に、あなたはあの事故についてどの程度の事実をご存じですか?」

「ここへ来る前、ネットで調べました。山梨の山中にジャンボジェット機が墜落して、乗員・乗客五百人全員が助からなかった、って。あと、わたしの両親らしい『相川』っていう苗字の夫婦の名前が乗客名簿にあったっていうのは知り合いから聞
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