暁 〜小説投稿サイト〜
拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第3章 高校3年生
わかば園と両親の死の真相 A
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ら一週間後、愛美のスマホに聡美園長から電話があった。「冬休みの取材の件、了承しました。気をつけて帰ってらっしゃい」と。そして、「涼介君のこと、ありがとう」とも。園長はそのことに愛美が関わっていたという事実を、あしながおじさん=¥ヶ轤ウんから聞いていたらしい。
 二年半ぶりに聞く彼女の声は少しも変わらずに穏やかで、愛美は胸がいっぱいで泣きそうになった。


 ――そして、二学期の終業式の後。

「さやかちゃん、珠莉ちゃん、じゃあ行ってきます。ご家族と純也さんによろしくね」

 肩から大きなスポーツバッグを提げ、スーツケースを携えた愛美は、寮の玄関先で親友二人に見送られた。
 ちなみに、純也さんは今年の年末年始も、愛美が来ないにも関わらず実家で過ごすことにしたらしい。淋しいだろうけれど、電話で声でも聴かせてあげられたら彼も少しはホッとしてくれるだろう。

「うん、気をつけて行っといで。三学期前にまた会おうね。こっちからまたメッセージ送るよ」

「ええ、お伝えしておくわ。叔父さま、今年の冬は淋しくていらっしゃるんじゃないかしら。でも、ある意味開き直っていらっしゃるのかもしれないわ。ああ見えて叔父さま、けっこう神経が図太くていらっしゃるから」

「……珠莉ちゃん、辛辣……」

「アンタさぁ、自分の叔父に対してコメントキツすぎない?」

 珠莉の毒舌に、愛美とさやかは絶句した。――と、予約したタクシーがもうすぐ来そうなので、そろそろ行かなければ。

「……あ、ゴメン。もうタクシー来ちゃうから、わたし行かないと」

「ああ、ゴメンゴメン! 引き止めちゃったね。じゃあ、実家≠ナゆっくりしておいで。あと取材も頑張って」

「うん……! じゃあ今度こそ、行ってきます!」

 さやかが〈わかば園〉のことを「実家」と言い表してくれたことに感激して、愛美は思わず涙腺が緩みそうになった。でも、これは嬉し涙だ。
 愛美は今度こそ二人の親友に背中を向け、出発したのだった。


   * * * *


 ――JR新横浜駅前でタクシーを降り、新幹線と再びタクシーを乗り継ぎ、愛美は約三年ぶりに〈わかば園〉へと帰ってきた。
 今回はタクシーの予約も、新幹線のチケットをネットで予約することもすべて自分でやった。交通費も自腹である。これらはすべて、ここを卒業して約半年の間に覚えてできるようになったこと。彼女の成長の証だった。

(懐かしいな……。まだここを卒業して三年も経ってないのに)

 門の外から園の建物を感慨深く眺めて、愛美は目を細める。
 二歳の頃からここで暮らしていたとして、中学卒業までは十三年とちょっと、この家≠ナ過ごしてきたことになる。ここには数えきれない思い出が詰まっているのだ。楽しかったことも、
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