暁 〜小説投稿サイト〜
拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第3章 高校3年生
わかば園と両親の死の真相 A
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か? きっと、これもあしながおじさん≠ゥら宣伝されたはずなので、みなさん読んで下さってると信じてます。
 まず最初に、二年前はせっかくお電話を下さったのに、冷たい態度を取ってしまってごめんなさい。あれから二年半以上経ちますけど、わたしはずっとあの時のことを悔やんでて、心の中に小さなトゲみたいに残ってます。
 でもね、園長先生。あの時のわたしは、「バイト」っていう名目でしか施設に帰れないことが悲しかったんです。わたしにとって〈わかば園〉は実家も同然だったから。そんな名目なんかなくたって、気軽に「ただいま」って帰れる場所であってほしかったし、今でもそう思ってます。
 さて、園長先生。ここからが本題です。
 わたしは今度、〈わかば園〉を舞台にした長編小説を執筆することにしました。ちなみに、初めて書いた長編がボツになって、わたしが落ち込んでたっていう話はあしながおじさん≠ゥらお聞きになってますよね?
 それはともかく、執筆するにあたって冬休みに施設を取材したいんですけど、大丈夫でしょうか? 冬休みの間は施設に滞在して、園長先生や他の先生たちから話を聞きたくて。あと、わたし自身についての話も。両親がどうして死んでしまったのか、いちばんご存じなのはきっと園長先生だと思うので……。
 実はわたし、もうだいぶ前からあしながおじさん≠フ正体が分かってて、その人はわたしの身近にいる人でした。その人から聞いたんですけど、わたしの両親は十六年前に起きた飛行機の事故に巻き込まれて死んだんじゃないか、って。本当にそうなんでしょうか?
 まだ一ヶ月くらいありますけど、こちらの予定もあるのでなるべく早くお返事を頂けると助かります。他の子たちや先生たちにもよろしくお伝え下さい。では、失礼します。   かしこ

十一月二十四日     わかば園出身の作家、相川愛美』

****

 〒○○〇―△△△△
 山梨県 〇〇市 ??
 児童養護施設 わかば園 若葉聡美様

****


「――さやかちゃん、珠莉ちゃん。わたし、ちょっと手紙出してくるね」

 まだそんなに夜遅い時間ではなかったので、愛美はすぐポストに投函することにした。

「手紙? 誰宛て? っていうか、もう暗いけど一人で大丈夫?」

「おじさまにはつい先日、出してきたところじゃなくて?」

「おじさまにじゃなくて、施設の園長先生にね。一人でも大丈夫だよ。さやかちゃん、心配してくれてありがとね」

「そっか。じゃあ気をつけて行ってきなよ」

「うん。行ってきます」 

 郵便ポストは寮の建物の外にあるので、暗い中手紙を投函しに行くのを心配してくれたさやかにお礼を言って、愛美はポストへ向かうのだった。


   * * * *


 ――手紙を投函してか
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