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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第3章 高校3年生
わかば園と両親の死の真相 A
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かと思って言っただけなんだ。その頃に、日本中で報道された大きな事故があって。俺もその頃中三だったから記憶に残ってたんだ」

「そう……だったんだ」

 なるほど、十五歳くらいだったら新聞やTVなどでニュースも目にするだろうし、記憶に残っていてもおかしくない。まして、そんな大事故だったならなおのこと、受けた衝撃も相当なものだっただろう。

「でも、わたしの両親がホントにその事故で命を落としたとは限らないよね? なのに、どうしてそう思ったの?」

「その事故の後――実をいうと飛行機事故だったんだけど、搭乗者名簿が公表されててね。確か、その中に『相川』っていう苗字の夫婦の名前があったような記憶があるんだ。そして、乗客・乗員全員の生存が絶望的だとも報道されてた気がして」

「…………」

 初めて突きつけられたショックな事実に、愛美は顔を強張らせた。

「ごめん、愛美ちゃん。まだその夫婦が君のご両親だって決まったわけじゃないし、俺もそこまでハッキリと憶えてるわけじゃないんだよ。相川なんて苗字、そんなに珍しくないしさ。もしかしたら君とはまったく関係ない別人かもしれないしね」

「…………うん」

「だから……、真実は君が育った施設の園長先生に直接確かめた方がいいと俺も思う。冬休み、そのために行くんだよね?」

「うん。多分、園長先生がそのあたりの事情、いちばん詳しく知ってるはずだから」

 純也さんが言ったことが、ぜんぶ事実とは限らない。彼がウソを言っているわけではないだろうけれど、記憶違いということもあるだろうし……。

(彼が〈わかば園〉の理事をしてるからって、何でも間でも知り尽くしてるとは限らないもんね)

 となると、やっぱり愛美の両親のことや、施設で暮らすことになった経緯をもっとも知っているのは聡美園長のはずだから。


   * * * *


 ――愛美はその夜、聡美園長に当てて手紙を書いた。
 電話にしなかったのは、園長の声を聞いたら二年以上前の記憶が甦り、うまく話せないと思ったからだ。


****

『拝啓、園長先生。
 ご無沙汰してます。わたしが施設を卒業して、もうすぐ三年が経つんですね。
 この手紙は駆け出しの小説家・相川愛美として書いてます。わたしは去年の秋にプロの作家としてデビューして、今は学業と文筆業の二刀流で忙しくも充実した毎日を送ってます。
 学校では友だちにも恵まれて、楽しい寮生活を送ることができています。でもきっと、わたしに関することはあしながおじさん≠ゥら毎月報告を受けてますよね。
 先月、わたしにとっては初めての書籍である短編集が発売されました。売れ行きも好調で、すでに重版されているそうです。園長先生や他の先生たちも買って読んで下さってます
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