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太り過ぎた犬
第一章

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                太り過ぎた犬
 オレゴン州でその犬は保護された。
「この子野良犬じゃないな」
「そうですね」
 雄犬、白地に顔に茶色の模様がある犬を保護してだった。施設のスタッフはその犬を見た瞬間に確信した。
「これだけ太っていると」
「いや、これは」
「尋常な太り方じゃないですね」
「全くだよ」
 見ればその犬は異様な、それこそ動けないまでに太っていた。首すらも動かせていない。
「測ったら三十八キロあったよ」
「この大きさでその体重は」
「おかしいね」
「有り得ないです」 
 全くというのだ。
「本当に」
「そうだよ、捨てられていても」
「元はですね」
「誰かに飼われていたよ」
「そうでしたね」
「けれどね」
 飼われていたがというのだ。
「問題はね」
「どうした飼い方だったか」
「もう散歩も何も行かせないで」
「運動なんてさせなくて」
「遊ぶこともしなかったね」
「ただ食べさせるだけですね」
「それも何も考えないで」
 そうであってというのだ。
「カロリーの高いものでも食べさせてたんだろう」
「それでこうなりましたね」
「うん、そしてね」
 そうした飼い方をしていてというのだ。
「飽きたか邪魔になったか」
「いらないと思って」
「それで捨てたんだよ」
「誰か知らないですが最低な飼い主ですね」
「全くだよ、しかしこれだけ太っていると」
 スタッフの一人は難しい顔で話した。
「どうしたものか」
「動けない位ですからね」
「首も動かせないし」
「まともに生きていけないですね」
「人間でここまで太っていると」
 そうであるならというのだ。
「命の危険があるし」
「この子もですね」
「うん、どうしたものか」
 正直施設の多くのスタッフがこの犬、バールと名付けられた彼がどうなるかと不安になった。太り過ぎてどうにもならないと思われてだ。
「安楽死の話もですか」
「出ていたんだ」
 先輩スタッフのジョゼフ=マキシモ長身で痩せたアフリカ系の彼は後輩スタッフのギリアム=
マティス先輩のマキシモより数センチ低く青い目とブロンドの短い髪の彼に深刻な顔と声でこのことを話した。
「消えたけれどね」
「あれだけ太っているので」
「それでだよ、けれどね」
「そのお話は消えましたね」
「そう、そして」
 それでというのだ。
「何とか徐々にでも動かしていって」
「運動させて」
「食事も管理してだよ」
「ダイエットさせますね」
「さもないとね」
 それこそというのだ。
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