第三部 1979年
新元素争奪戦
バーナード星爆破指令 その1
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情になり、そして無表情になった。
途方に暮れているといった様子だ。
「どういうことですか。仰る意味が分かりませんが……」
参謀総長は、不審に思って聞き返した。
周囲の者たちは、サハロフの豹変に唖然としている。
呆然とするサハロフに代わって、KGB長官が補足した。
「重大な重力異常を発生させ、島の植生に深刻な影響を与えたと聞き及んでおります」
突然の告白に、参謀総長は煙草を落とした。
もしソ連国内に向けて、そんなものが使われたら……
痩せて貧しいこのロシアの地が、さらに貧しくなる。
ただでさえ、年間の気温差が100度もあるシベリアの原野に首都を移して、その命脈を伸ばしているというのに……
友邦諸国もかつての飢饉のときの様に助けてはくれぬのだ。
ほかならぬ断行の原因を作ったのは、我が国にあると言われればそれまでだが、ジンギスカンの様に略奪をするにしても、その兵馬の数は十分ではない。
大祖国戦争の時のように、13歳の幼子に銃を持たせろというのか。
将来、母となるような小娘たちに、生涯苦しみ続ける様な悪夢を味わわせるのか。
健康な若者たちの手足をもいで、芋虫の様にのた打ち回って、苦しめさせるのか……
蒙古帝国は資源が乏しいがゆえに版図を拡げ、それがゆえに余計に確保すべき資源要件が厳しくなり、自滅したではないか。
我が国にそのような轍を踏ませてはならぬとしてきた、この俺の努力は何だったのか。
燃え燻る紙巻煙草を呆然と見ながら、男は30有余年前の悪夢の戦争を思い起こしていた。
「この際、偽情報を流して、バーナード星系そのものを破壊させてはどうでしょうか」
参謀総長は言葉を切ると、タバコに火をつけた。
これは彼が新しい話題に持っていくときの常套手段である。
「どうやって……」
「木原にです」
ウスチノフ国防相が怒鳴った。
「あの日本野郎にか!」
「そうです。
木星のガニメデと土星の衛星を跡形もなく破壊した、あの日本野郎なら、完璧に実行できるでしょう」
KGB長官が尋ねた。
「6光年もの距離がある場所ですぞ。どうやって送り込むのですか」
「14億キロメートルを瞬間移動できる存在です。
ゼオライマーならば、たやすいでしょう」
それまで黙って聞いていたチェルネンコ議長が口を開いた。
「して、方法は……」
「BNDの中にいる我らが協力者を用いて、ゲーレンにそのことを伝えるのです。
ゲーレンの事ですから、木原に相談するはずです。
彼の孫娘は、木原に惚れている節がありますから……」
チェルネンコは、男の答えに満足し、何度も頭を振った。
「流石だ、同志参謀総長!」
チェルネンコの鶴の一声で、大勢は決した。
最高幹部たちは一斉に挙手し、参道の意を示す。
「では、早速その線で行き
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