第二章
[8]前話
するとだ、彼が毎日通っている講道館の稽古に行くとだった。
赤帯を巻いた彼は小柄ながら若い黒帯の屈強な男達をだった。
何でもない、ちぎっては投げちぎっては投げという感じで投げていった。動きは速く技は多彩でキレも抜群だった。
その彼を見てだ、直美は思わず唸った。
「私格闘技とか武道知らないけれど」
「強いってわかるよな」
「物凄いわね」
「国士館出てるけれどそこでも無敵でな」
「警察官になられて」
「ヤクザ屋さんにもそうでな」
大学で話した通りにというのだ。
「合気道や空手だってな」
「強いのね」
「そっちの稽古もしてるんだよ」
「毎日なの」
「プロレスラーと練習試合して勝ったこともあるそうだし」
そうしたこともあってというのだ。
「本当に強いからな」
「見ての通りね」
「ああ、凄いひい祖父ちゃんだよ」
「全くよね」
直美もその通りだと答えた。
「あれだけ動いても息切らしてないし」
「八十過ぎてもああだしな」
「皆一目置くのも当然ね」
「全くだよ」
潤一郎はその通りだと応えた、そしてだった。
稽古を終えた曾祖父と三人で家に帰った、だがこの時曽祖父は曾孫とその彼女に笑ってこんなことを言った。
「もう歳だな、動きが悪くなってきた」
「えっ、あれで?」
「あれでですか」
「体力も落ちた、無理は出来ないな」
自分の言葉に驚く曾孫とその彼女にさらに言った。
「わしもな」
「何処がだよ」
「あそこまで動けたのに」
「わしとしてはな、やっぱり歳は取るな」
こうしたことを小柄な身体で言うのだった、だがその動きは二人から見るとよかった。何時旅立つかわからない外見でも。
やがて潤一郎と直美は大学を卒業して就職して結婚した、そして子供も出来たが。
その子供も逍遥の稽古を見た、そのうえで凄いと言ったが彼はやはり歳だと言った。九十を超えても背筋はしっかりとしていたが。
ひい祖父ちゃんは強かった 完
2025・3・21
[8]前話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ