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ひい祖父ちゃんは強かった
第二章

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 するとだ、彼が毎日通っている講道館の稽古に行くとだった。
 赤帯を巻いた彼は小柄ながら若い黒帯の屈強な男達をだった。
 何でもない、ちぎっては投げちぎっては投げという感じで投げていった。動きは速く技は多彩でキレも抜群だった。
 その彼を見てだ、直美は思わず唸った。
「私格闘技とか武道知らないけれど」
「強いってわかるよな」
「物凄いわね」
「国士館出てるけれどそこでも無敵でな」
「警察官になられて」
「ヤクザ屋さんにもそうでな」
 大学で話した通りにというのだ。
「合気道や空手だってな」
「強いのね」
「そっちの稽古もしてるんだよ」
「毎日なの」
「プロレスラーと練習試合して勝ったこともあるそうだし」
 そうしたこともあってというのだ。
「本当に強いからな」
「見ての通りね」
「ああ、凄いひい祖父ちゃんだよ」
「全くよね」
 直美もその通りだと答えた。
「あれだけ動いても息切らしてないし」
「八十過ぎてもああだしな」
「皆一目置くのも当然ね」
「全くだよ」 
 潤一郎はその通りだと応えた、そしてだった。
 稽古を終えた曾祖父と三人で家に帰った、だがこの時曽祖父は曾孫とその彼女に笑ってこんなことを言った。
「もう歳だな、動きが悪くなってきた」
「えっ、あれで?」
「あれでですか」
「体力も落ちた、無理は出来ないな」
 自分の言葉に驚く曾孫とその彼女にさらに言った。
「わしもな」
「何処がだよ」
「あそこまで動けたのに」
「わしとしてはな、やっぱり歳は取るな」
 こうしたことを小柄な身体で言うのだった、だがその動きは二人から見るとよかった。何時旅立つかわからない外見でも。
 やがて潤一郎と直美は大学を卒業して就職して結婚した、そして子供も出来たが。
 その子供も逍遥の稽古を見た、そのうえで凄いと言ったが彼はやはり歳だと言った。九十を超えても背筋はしっかりとしていたが。


ひい祖父ちゃんは強かった   完


                   2025・3・21
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