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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第113話 はじめての哨戒(おつかい)
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 宇宙暦七九一年 一〇月二二日 シャンダルーア星域より第三辺境星域管区

 第一〇二四哨戒隊司令部(現在員二名)の心温まる交流の後、隊は予定通りBルートによる前線哨戒任務に出動した。

 Bルートは一三ある第五四補給基地配属の哨戒隊に分け与えられた哨戒航路の一つで、ギシンジ大佐の言うように帝国軍哨戒隊との接触機会が比較的少ないとされている。星域管区に所属する全ての星系を支配率・遭遇率・交戦率・交戦規模・過去の大規模会戦との時系列など、星域管区に所属する全ての哨戒隊の鉄と血で積み重ねられてきた統計が、それを物語っていた。

 ちなみにどの哨戒航路を通っても基本的には四つの星域を渡り歩くことになる。シャンダルーアからフォルセティ、ファイアザード、パランティアとより帝国軍の哨戒網に近づき、来た道とは別の航路でシャンダルーアに帰還する。そして他の補給基地に配属されている哨戒隊とは途中何度かルートが交錯するので、情報交換も同時に現地で行われることが多い。

 特に基地へと帰還する哨戒隊の情報は、どんなものでも鮮度が高く極めて貴重だ。何処の偵察衛星が破壊されていた、逆に帝国軍の偵察衛星を破壊した、艦艇の残骸が漂流している、残置重力波に異常が確認された等々。どんな情報でも近々の行動予想には欠かせないし、部隊の生存に関わってくる。

 例えば味方の宙域固定式無人偵察衛星が破壊されていた場合。設置した衛星は特別に命令が出てない限り意図的に破壊することはないので、帝国軍の仕業だと推測できる。どこに味方の偵察衛星が配備されているかは事前に分かっているから、どのような規則性をもって破壊されているかで帝国軍の行動ルートが推測できる。

 ただ当然のことながら、帝国軍も逆手にとって同盟軍を誘引しようという意図もあるだろう。防備は薄いと見せかけて支配権を獲得しようと突出して来た同盟軍部隊を、一斉に取り囲んで袋叩きにしようといった虚々実々の駆け引きが、広大なこの辺境星域管区では常時繰り広げられている。

「懲役二年の刑務所にようこそ、新入り(ニューカマー)」

 出動して三日後。シャンダルーア星域からフォルセティ星域へと星域区分が変わるミクトランテクトリ星系の跳躍宙域で、入れ違いでフォルセティ星域側から跳躍して来た哨戒隊の指揮官から通信が入った。

 実のところ跳躍宙域における重力波の異常を感知したので、跳躍してくる艦艇ありとして第一〇二四哨戒隊全艦に第一級臨戦態勢を取らせていた。まだ帝国軍の出現確率が低い星域とはいえ、跳躍直後の咄嗟砲撃の可能性を考えて跳躍宙域を囲むような半円陣形で宙域中心部に全艦砲指向していたのだが、相手の指揮官はそれを「新人の過剰反応」と思ってよほど慌てたのだろう。直ぐに識別信号を発して俺に通話を要求して来たわけだ。

「第一二
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