第一章
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火災保険には入れ
東京は冬になると空気が乾燥する、しかもからっ風と呼ばれる強い風が吹くのでかつてはこの季節は火事が多かった。
だが今は文明の進歩で料理の時にガスコンロではなく電気で煮たり焼いたりする様になり建物も燃えにくいコンクリートになっている、そして消防隊も存在していてだ。
かつてあった様な大火事は起きなくなっている、だが。
「火災保険には入らないとな」
「絶対にね」
結婚したばかりの長谷川夫婦が二人が暮らしているマンションの中で話していた、夫の半蔵は一重の釣った切れ長の目で細面で色白だ、黒髪はショートで背は一七一位で痩せている。妻の姫奈は卵型の顔で長い黒髪をセットして後ろで束ねている。大きな二重の目で赤い唇は小さい。鼻が高く背は一六〇程で胸が大きくスタイルがいい。二人共学校で教師をしている。
「万が一に備えて」
「そうしておかないと」
「火事って起こるからね」
「うん、僕達が用心していても」
夫はそれでもと話した。
「けれどね」
「周りのお家が起こしてね」
「巻き込まれることもあるし」
「放火する奴だって出るし」
「それなら」
「ええ、どうしてもよ」
妻も言った。
「火災保険はね」
「入っていた方がいいよ」
「本当にね」
「じゃあね」
「何処に入るか」
「じっくり話そう」
「これからね」
結婚してまずはだった。
二人は自動車保険や地震保険、それにこの火災保険と何かと保険の話をして入った。自分達の健康についてもだ。
兎角保険に入った、そしてだった。
これはという保険は全部入った、しかし。
夫の知り合いで所謂迷惑系ユーチューバーをしている橘竜、家鴨がひん曲がった様な顔で目付きも服装も髪形も半グレの様な彼が笑って言った。
「そんなのいいだろ」
「保険はいらないかい」
「いらないだろ」
半蔵の仕事帰りたまたま会って居酒屋に一緒に入って飲みつつ言うのだった。
「別にな」
「いや、それがね」
半蔵は橘に真面目な顔で言った。
「そうしたことはあるから」
「備えあればかよ」
「だからね、ちゃんとね」
「保険入ってるのかよ」
「そうしてるよ」
「そんなことそうそう起こるかよ」
だが橘は半蔵の話を嘲笑って否定した。
「俺は運がいいしな」
「だから火事に遭わないんだ」
「運がいいからこれまで何しても捕まらなくてな」
「ユーチューブでだね」
「ああ、色々やってもな」
迷惑系ユーチューバーとしてというのだ。
「すれすれでな、俺も考えてるけれどな」
「それでか」
「ああ、そしてな」
そのうえでというのだ。
「儲けてもいるし」
「だからこれからもなんだ」
「好きなことやって儲けてな」
「保険にも入らないん
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