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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第3章 高校3年生
わかば園と両親の死の真相 @
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る。――でも珍しいね、電話くれるなんて」

『愛美ちゃんが落ち込んでるらしい、って珠莉からメッセージもらったからさ。でも、「しばらくはそっとしておいてあげて下さい」とも書いてあったから、どうしてるかなって心配してたんだけど。もう大丈夫そうだね』

「うん。わたしは大丈夫だよ。すぐに立ち直れたから。でも、ずっと心配してくれてたんだね。ありがとう」

『そりゃ、彼氏だから?』

 彼が澄まして言うので、愛美はまた笑う。でも、ちゃんと気にしてくれていたことが嬉しかった。

『――あ、そうだ、短編集買ったよ』

「えっ、ホント? どうだった?」

『すごく面白かったよ。久しぶりに本を読んで「楽しい」って感じられた。ありがとう、愛美ちゃん。俺との約束を果たしてくれて』

「純也さん……。よかった、純也さんにも『面白い』って言ってもらえて。でもまだまだこれからだよ。わたし、もっともーっと面白い小説を書いて、純也さんに絶対読んでもらうから。もう次回作の題材も決まってるんだよ。書き始めるのは来年に入ってからだけど、楽しみにしててね」

『へぇ、そっか。分かった、今から楽しみに待ってるよ』

 純也さんはきっと、愛美がまだ少し落ち込んでいることに気づいているはずだ。だから、次の瞬間こんなことを言ってくれた。

『愛美ちゃん、今度二人でショッピングにでも行かないか?』

「えっ、ショッピング?」

『うん。気持ちが落ち込んでる時には思いっきり買い物でもして、気持ちを紛らわせるのがいちばんだ。俺、何でも買ってあげるから、欲しいものがあったら何でも言いなよ』

(えーっと、『あしながおじさん』の物語では確か……)

 ジュディが初めて挫折した後のクリスマスに、あしながおじさん≠ゥら十七個ものプレゼントが送られてきた。あれもきっと、あしながおじさん=<Wャービスが落ち込むジュディを励まそうとしてやったことなんじゃないだろうか?
 つまり、純也さんがしようとしていることはあれの現代版ということか。……そう解釈した愛美は、その提案に素直に乗っかることにした。

「純也さん、ホントにいいの? そんなこと言ったらわたし、うんと高いものおねだりしちゃうけど、『あんなこと言うんじゃなかった!』って後悔しないでね?」

『…………』

 つい悪ノリをすると、純也さんが黙り込んでしまう。これはリアクションに困っているんだろうか?

「あっ、ウソウソ! 冗談だよ。でも……せっかくだし、お言葉に甘えちゃおうかな」

『うん、その方が俺も嬉しいよ。じゃあ……今度の土曜日、横浜でどうかな? 俺がそっちに行くよ』

「ありがとう! こっちに来てくれるの? わたしが東京に行ってもいいけど、まだ東京のことはよく分かんないし。
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