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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第3章 高校3年生
わかば園と両親の死の真相 @
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しの言葉なんて送ってこないで下さい。久留島さんにもそう伝えてほしいです。
 今日の放課後、短編集のゲラチェックが終わったので担当の編集者さんに横浜まで来てもらったんですけど。そこで言われたんです。「わたしが初めて書き上げた長編小説は本として出版できない」って。出版会議でボツを食らったって。
 わたしはショックでした。自分では傑作を書いたつもりだったから。「これは絶対に本屋大賞とか芥川賞が狙える!」って本気で思ってたんです。それに、これはわたしにとって初めての大きな挫折でもあったから。
 どこがダメだったのか理由を聞いたら、「セレブの世界の描写に不適切な部分や、わたしの個人的な偏見が含まれてる」んだそうです。わたし、確かに一部の人たち(珠莉ちゃんや純也さん、もちろんおじさまも)を除いたセレブの人たちに苦手意識はあるので、それを見透かされちゃったのかも……。
 言われた直後はかなり落ち込んだし、わたしって才能ないのかも……なんて思いました。おじさまは買い被りすぎたんだ、とも。だから、わたしに先行投資したのもお金をドブに捨てたようなものなんじゃないか、って。
でも、編集者さんが言ってくれたの。「先生はまだ高校生ですし、先生の作家人生はまだ始まったばかりなんですから。焦らず、じっくりといい作品を送り出していきましょう」って。次回作でもっといい作品を書けばいい、って。わたし、その言葉にすごく励まされました。一度挫折したくらいでこんなに落ち込んでてどうするんだ、って。
 寮に帰ってから珠莉ちゃんにも読んでもらってアドバイスをもらったら、編集者さんと同じことを言われて「やっぱり」ってストンと納得できました。
 だからもうこのことをバネにして、わたしは気持ちを切り替えました。次回作について、もう構想を練り始めてます。わたしはもう大丈夫!
 まだザックリとだけど、次回作はここを舞台にして書こうっていうのは決まったんです。さて、どこでしょう? ヒントはおじさまもよく知ってるあの場所です。さあ、シンキングタイムスタート!
 ……え、分からない? 正解は〈わかば園〉です。わたし、今回の失敗をふまえて次回作は自分のよぉーーく知ってる世界のことを書くことにしたんです。そして、主人公はわたし自身!
 わたしね、両親が小学校の先生だったってことと、事故で亡くなったってことしか知らなかったんです。いくつっくらいの時からあの施設にいたのか、どうしてあそこで暮らすことになったのか、園長先生も施設の他の先生たちも何も話してくれなかった。多分、わたしがまだ幼かったから話しても理解できないと思ったんじゃないかな。
 だから、この小説を書くためにもっともっとわたし自身のことを知りたい。両親が亡くなった事故のこと、施設に来た当時のわたしのことを、改めて園長先生から聞きたい。というわけ
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