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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第3章 高校3年生
わかば園と両親の死の真相 @
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だの!? 早かったね」
あの小説は原稿用紙三百枚分ほどの長さがあるので、じっくり読み進めると読み終えるまで二時間以上はかかるはずだ。ということは、珠莉は読むスピードを速めたということになる。
「ええ、愛美さんが私からのアドバイスを待ってると思って、急いで読んだのよ。――それでね、愛美さん。この小説で私が感じたことなんだけど」
「うん。どんなことでも大丈夫だから、忌憚なく言って」
「じゃあ、述べさせてもらうわね。――私の感じたことを率直に言わせてもらうと、やっぱりこの小説の中からは、あなたのセレブに対する苦手意識というか偏見というか、そういうものが読み取れたの。出版に至らなかった理由はそこなんじゃないかしら」
「あー、やっぱりそうか。編集者さんからも同じこと言われたんだ」
書籍として流通するということは、この小説が多くの人の目に触れるということだ。読んだ人の中には気分を害する人も出てくるかもしれない。プロとして、そういう内容の本を世に送り出すわけにはいかないと判断されたのだろう。
もしこの小説を珠莉ではなく、純也さんに読んでもらったとしても、きっと同じことを言われたに違いない。
「『出版できない』って聞かされた時はショックだったけど、これで納得できたよ。ありがとね、珠莉ちゃん」
これで、初めての挫折からはすっかり立ち直ることができそうだ。愛美はもう前を向いていた。
「いえいえ、私でお役に立ててよかったわ。でもあなた、思ったより落ち込んでいないみたいね」
「そういやそうだよねー。『ヘコんだ」って言ったわりにはけっこう前向いてるっていうか」
「うん。もうわたしの意識は次回作に向いてるから。いつまでも落ち込んでられないもん」
二年前の愛美なら、いつまでもウジウジ悩んでいただろう。でも、もうネガティブな愛美はいない。純也さんに釣り合うよう、いつでも自分を誇れる人間でいたいから。
「一応、おじさまには報告しなきゃと思ってるんだけど、純也さんにも言った方がいいかな? でもそれじゃ二重の報告になっちゃうし」
「だったら、いつかみたいに純也叔父さまには私から報告しておくわ。あなたはおじさま≠ノ手紙で報告するだけでよくてよ」
「ありがと、珠莉ちゃん。じゃあよろしく。……あ、『慰めてくれなくていいから、しばらくそっとしておいて』って付け足しておいて」
「分かったわ」
というわけで、純也さんへのメッセージは珠莉に任せて、愛美は机の上にレターパッドを広げた。
****
『拝啓、あしながおじさん。
お元気ですか? わたしは今日、ちょっとヘコむ出来事がありました。
慰めてほしいわけじゃないけど、ただ聞いてもらいたくて。間違っても、次の手紙で励ま
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