蛇足三部作
『最後は隣に並んで歩こう』
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でも?」
「武力でオレ達を超える必要なんて無いさ。大事なのは、彼らが我々の願いを受け継いでくれる事なのだから」
過去の痛みに囚われる事無く、かといって覚えた痛みを忘れる事無く。
そうして永遠と続いていくのだと錯覚させた忍界の憎しみの螺旋を、今を生きる忍び達にこそ断ち切ってもらわねばならない。
昔の私が出来なかった、果たす事の出来なかった夢を――今度こそ、叶えてもらいたい。
……大丈夫だ。彼らはきっと間違えないでいてくれる。
だから心配などする必要は無いのだ。――何より。
「世界を換えようともがく権利は、生者にだけに許された特権だぜ? 死人のオレ達が口出しできるようなものじゃない」
「……厭味か、貴様」
「おう、その通りだとも」
「ふん。貴様の言い分だと、心残りなんぞないとでも言わんばかりだな」
まあ、穢土転生から解放されたにも関わらず現世に二年も留まり続け、あちこちほっつき回って歩いていた私にだけは、こいつだって言われたくはないだろう。
意地の悪い物言いに、一度死んだ所で人間の性根というものは早々簡単に変わらないものなのだと他人事として痛感した。
……それにしても、心残りかぁ。
この二年という、短い様で長かった年月の間に起こった出来事を思い返してみる。
随分と年老いた、かつての教え子達との再会。
古い知人や友人達の血を引く者達との触れ合い。
この好敵手の末裔である優しい兄と純粋な弟との出逢い。
向日葵の様に屈託なく笑う、眩い金の髪と強い意思を宿した蒼い瞳を持つ少年との交流。
そのどれもが大切で、その誰もが大切で愛おしい――そう思える人々と出会えた僥倖を誰とも知らぬ相手に感謝しよう。
けれどもそれらは心残りには成り得ないと断言できる――何故なら。
「だって……お前とまた戦えたし」
ああそうだ、その通りだ。
ずっと誰かや、何かのために戦ってきた嘗ての私の在り方を否定はしない。
けど、一度でいいから自分の願いとしてこの好敵手と戦ってみたかった。
「前々から一族とか里とか何も気にせずに、思う存分お前と戦えたら……どんな感じなのか……確かめてみたかったからなぁ。それも叶った以上、オレがこの世に留まる理由も正直ないだろ?」
あの日。マダラではなく、一族の将来と世の安寧のために戦う事を止めた日に。
一族のためには、人々のためには仕方の無い事だと心の中で納得しつつも、この好敵手と戦う事を止めなければならない事を、どこかで勿体無く思っていた。
特に『終末の谷』での戦いはそれに値する様な物ではなかったのも正直な所心残りであったから、尚更。
二年前に大蛇丸によって冥土から引き摺り戻され、その呪縛から逃れたのにも関わらず、どうして現世
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