エピローグ
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見滝原を去ったのだろう。
ハルトは深く息を吐き、次にフロストノヴァを向く。
「フロストノヴァ……手伝ってくれたことには……感謝するよ。ありがとう……」
無理矢理言葉を紡ぐような感覚で、ハルトは口を動かした。
フロストノヴァはほとんど体を動かすことなく、頷きでその言葉を受け入れた。
すると、コウスケが「フロストノヴァ」と呼び掛ける。
「しつこいようで悪ぃけどよ……もう、戦いには参加しねえんだよな」
「私はお前に負けた。それに、お前が言ったことだろう。私はもう詰んでいると」
「ああ……」
コウスケは頷いている。
フロストノヴァが吐く息は、もう初夏にもなりそうだというのに白い。そのギャップに、ハルトは今の季節が分からなくなる。
「お前たちと違い、マスターは戦う力がない。令呪も一つしかない。私の能力を持っても、お前やウィザード、キャスターに敵うとも思えない……ならば、マスターたちを守ってこの地で暮らすほかないだろう」
フロストノヴァはそう言いながら、破壊された講堂の方を見つめた。彼女の視線を追うと、男女の二人組がこちらへ駆け寄ってきていた。
「あれは……瀬川さんに、加賀さん?」
「私のマスターだ。……ここで生きる。願いもなく。それがビースト、お前との約束だ」
フロストノヴァは薄っすらとほほ笑んだ。
彼女はそのまま、ハルトたちへ背を向ける。ゆったりとした歩調で祐太と香子の方へ歩いていき、数秒ハルトとコウスケに振り向く。
やがて歩み去っていく彼女には、もうハルトたちへ敵意を向けることはない。そんな確信があった。
その時。
「……えりかちゃん?」
ハルトは、気付いてしまった。
たまたまコウスケの隣にいるえりか___丁度フロストノヴァの後ろ姿へ顔を向けると、彼女の姿も目に入る___彼女の体が、徐々に色合いが薄くなっていることに。
「えりかちゃん、その体は……?」
「え?」
ハルトが声をかけるまで、えりかは気付いていなかったようだ。彼女は自らの体を見下ろし、ようやく体の異常が認識された。
「こ……これは……!?」
「何で……!?」
疑問を投げながらも、ハルトはその理由ははっきりとしていた。
さきほど、キュゥべえが語った通り。マスターがいないサーヴァントは、魔力供給ができない。つまり、えりかはキュゥべえとアナザービーストとの戦いで消耗しきってしまったのだ。
「サーヴァントは、令呪……マスターからの魔力供給が無い限り長くこの世界に留まることはできない……蒼井は、もう……」
消滅を待つしかない。
そんな状況だというのに、えりかの表情はどこか穏やかだった。とても今から消滅する人間の顔には思えない。静かに目を瞑りながら、消滅の
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