暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/WizarDragonknight
エピローグ
[1/5]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
 アナザービーストの時計が砕け、消滅した。
 それを見届け、ハルトはゆっくりと爆心地へ近づいていく。

「結梨ちゃん……」

 すでに、結梨と呼ぶべき命はそこにはない。
 そこにいるのは、アナザービーストの変身者だった犬。結梨の声で言葉を発し、結梨の記憶を持っていた犬の体を撫でたハルトは、その冷たさに表情を強張らせた。

「……また……」
「どうやら、お前が関わった者は皆死ぬようだな」

 ハルトの背後でパピヨンは鼻を鳴らした。
 もう、腹を立てる余力も残っていない。ハルトは静かに蝶の仮面へ振り向き、ゆっくりと立ち上がった。

「お前は……これからどうするんだ? もう、聖杯戦争に参加できないんだろ?」

 ハルトの問いに、パピヨンは「ふむ」と顎に手を当てた。

「その通りで、俺はどうやら永劫参加資格を得られないらしい……賢者の石もな。そして、それを手に入れようとした代償が、この体だ」

 パピヨンは自らの手を見せつける。少し振れば、その体からメダルがポロポロと零れ落ちていく。

「分かるか? この体」
「何が?」
「相当虚しいのさ、このメダルの塊は。もう視覚から色彩が失われていてね。おそらく他にも失われた機能が多々あるのだろう。メダルなのだから不老不死という一点だけは叶ったと思うが、これだともはや、不死は牢獄だよ」
「……」

 ハルトは口を紡ぎながら、結梨とパピヨンへそれぞれにそれぞれ視線を投げる。
 片や、短命の身体として生を受け、生きようともがいた結果、メダルの身体になってしまったパピヨン。
 片や、命を受けたものの、最初からキメラの素材として生を受け、親からも歪んだ愛情しか受けられなかった結梨。

「お前も結梨ちゃんも……教授に勝手に産み落とされただけなんだよね……」
「同情されたくはないな」

 顔を伏せたハルトへ、パピヨンは続けた。

「だが、聖杯戦争に参加しようとした罰がこれだとは……ふん。こんなバカげた戦い、俺の方から願い下げだ」

 パピヨンはそう吐き捨てると、無数の蝶が彼の周囲から飛び立っていく。やがて、彼自身の身体もまた蝶となり、朝焼けの空へ舞い上がっていく。

「じゃあな、偽善者。せいぜい生き残ることだな」
「お前も……もう、変な戦いに参加しようとか思うなよ」

 ハルトは顔を上げることはない。ただ、彼の気配がぐんぐんと高度を上げていくのは感じ取れていた。
 もう、彼とは二度と会うことはないだろう。蝶の羽音が、だんだんと小さくなっていく。
 やがて。

「……もう、行きましたよ」

 えりかのその言葉に、ハルトはようやく顔を上げた。
 すでにパピヨンの姿はそこにはない。
 聖杯戦争に参加することなく、永遠の命となってしまった彼は、この
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ