エピローグ
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アナザービーストの時計が砕け、消滅した。
それを見届け、ハルトはゆっくりと爆心地へ近づいていく。
「結梨ちゃん……」
すでに、結梨と呼ぶべき命はそこにはない。
そこにいるのは、アナザービーストの変身者だった犬。結梨の声で言葉を発し、結梨の記憶を持っていた犬の体を撫でたハルトは、その冷たさに表情を強張らせた。
「……また……」
「どうやら、お前が関わった者は皆死ぬようだな」
ハルトの背後でパピヨンは鼻を鳴らした。
もう、腹を立てる余力も残っていない。ハルトは静かに蝶の仮面へ振り向き、ゆっくりと立ち上がった。
「お前は……これからどうするんだ? もう、聖杯戦争に参加できないんだろ?」
ハルトの問いに、パピヨンは「ふむ」と顎に手を当てた。
「その通りで、俺はどうやら永劫参加資格を得られないらしい……賢者の石もな。そして、それを手に入れようとした代償が、この体だ」
パピヨンは自らの手を見せつける。少し振れば、その体からメダルがポロポロと零れ落ちていく。
「分かるか? この体」
「何が?」
「相当虚しいのさ、このメダルの塊は。もう視覚から色彩が失われていてね。おそらく他にも失われた機能が多々あるのだろう。メダルなのだから不老不死という一点だけは叶ったと思うが、これだともはや、不死は牢獄だよ」
「……」
ハルトは口を紡ぎながら、結梨とパピヨンへそれぞれにそれぞれ視線を投げる。
片や、短命の身体として生を受け、生きようともがいた結果、メダルの身体になってしまったパピヨン。
片や、命を受けたものの、最初からキメラの素材として生を受け、親からも歪んだ愛情しか受けられなかった結梨。
「お前も結梨ちゃんも……教授に勝手に産み落とされただけなんだよね……」
「同情されたくはないな」
顔を伏せたハルトへ、パピヨンは続けた。
「だが、聖杯戦争に参加しようとした罰がこれだとは……ふん。こんなバカげた戦い、俺の方から願い下げだ」
パピヨンはそう吐き捨てると、無数の蝶が彼の周囲から飛び立っていく。やがて、彼自身の身体もまた蝶となり、朝焼けの空へ舞い上がっていく。
「じゃあな、偽善者。せいぜい生き残ることだな」
「お前も……もう、変な戦いに参加しようとか思うなよ」
ハルトは顔を上げることはない。ただ、彼の気配がぐんぐんと高度を上げていくのは感じ取れていた。
もう、彼とは二度と会うことはないだろう。蝶の羽音が、だんだんと小さくなっていく。
やがて。
「……もう、行きましたよ」
えりかのその言葉に、ハルトはようやく顔を上げた。
すでにパピヨンの姿はそこにはない。
聖杯戦争に参加することなく、永遠の命となってしまった彼は、この
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