第四章、その5の1:気づかぬうちに
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製の上質なデスクに肘を突きつつ、おのエルフは皺寄せた猪のような顔から、猪のような声で言う。
「・・・・・・それで」
「?」
「それで何が望みだ、補佐役殿?貴様の上司は、会話の小細工は好かぬ性質なのだろう?」
挨拶も要らぬとばかりに男は単刀直入に聞いてきた。ならば此方もそう答えねばならないだろうと慧卓は思い、そのままに返す。
「・・・情報が伝わっているのなら早速本題に移りましょう、賢人殿。我等と一時的に手を組んでいただけませんか?王国と、エルフの未来のために」
「ふん、人間共の考えそうな事だ。大方、調停官の方も別の奴に接触を図っているのだろうな。或いは、もう既に図っているか」
「予定通りであれば、もう既に結果が出ているのかもしれませんね。調停官殿が御話をされるのは穏健派と名高いシィ=ジョス殿。エルフには珍しく他の種族にも偏見を持たぬ方だと聞いております。会談は平穏且つスムーズに行われる事でしょうな」
「そうかもしれん。だが人間とは愚劣な生き物でな、気にする所をちょいと叩いてやれば、直ぐに激怒するというものよ。案外拗れているかもなぁ?」
慧卓は黙して反応しない。不愉快げに目の前の賢人は鼻を鳴らした。
「第一、俺は人間が嫌いだ。人間共の底の浅さには、常日頃から辟易しておる。この間もそうだ。向こう側から犯罪者共が流れてきおったわ」
「犯罪者、ですか。向こう側とは人間の?」
「当たり前だ!!自治領の法も知らず、農家の娘を嬲った末に殺しおった!・・・あの者の家族には申し訳ない思いをさせたわ・・・。それもこれも奴等のせいだ・・・なんでこっちに来たか分かるか?」
「・・・王国で犯した罪から逃れるために?」
「ああ、俺とてそう思ったっ!だがあいつらは拷問で何を言ったと思う!?『エルフの女を犯したかったから』だとさ!!何と舐められたものよっ!!」
慧卓はうんざりしたような気分になってきた。この頑固なエルフは人間と会話をするのが嫌いらしい。外交など何も考えていないようだ。
「我が村に立ち入る人間はあの事件以来全て、貴様らも見たであろうが、ああやって鳥葬に処しておる。光栄に思えよ、貴様等は最初の例外だ」
「・・・主神の御加護に与る我等民草は、貴賎の差なく平等に同じ王国の民であります。そのような者がかくの如く罪を犯し、賢人殿の御手を煩わせた事、この場を借りて謝罪します。申し訳ありません」
「・・・ならば手を貸すのだ。それで貴様等の謝罪を受け入れてやろう」
その上に更にうんざりする。この男、頑固なだけでなく欲深い一面もあるようだ。為政者として正しいのではあるが腹が立つものであった。
「・・・如何様にも承りましょう、賢人殿」
「モリガンの弓に掛けて、その言葉、信じるとしよう。・・・実は俺には息子が二人居
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