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王道を走れば:幻想にて
第四章、その5の1:気づかぬうちに
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に始まったその日は、草原を越える事が第一の課題となった日であった。何故かと言えば、寝ている最中にどんよりとした雨雲が近付いてきた為であり、肝を冷やした事に、それは雷雨の雲であったのだ。豆電球のような小さな稲光の後に、地響きのような唸りが天から注いでくる。草原に居ては拙いと思って四者は速足となり、昼過ぎには次の森へと逃げ込めた。後を追うように強い風雨が襲ってきたのが辛い所であったが、雷に打たれるよりかは遥かにマシであった。入った先の森が、中々に鬱蒼としたものであったとしてもである。
 吹き抜ける風と、枝葉を縫って、伝って降り注ぐ雨露。暗い雲が冷たい粒となって降ってくるかのようであり、足取りは打って変わって重くなる。足に絡む蔦や枝を億劫に蹴り払い、何とかして少年エルフの背中を追って行く。無理して距離を稼ごうとしたからか、少年の息は大分上がっていた。余り無理をするものではないと慧卓は心を決め、この日は夜に入る前に寝床を構える事にした。ぐっすりと眠る彼の顔は漸く年相応の幼さが見える所であり、ユミルは一縷の安心を抱く。共に歩いてきたのはただの案山子ではなかったのだ。慧卓も顔に引っ付く昆虫には諦めたようであるが、かさかさと周囲を這いずる動物には終始びくびくとしていた。毒蛇は居ないからと言っても安心はしないだろう。真に小心な上司であると、ユミルは心中に溜息を漏らした。

 そして迎えた三日目の朝。雨雲の尾が、まるで蜻蛉の羽のように空に広がっている。湿った空気に満ち満ちた森を歩いていき、じめじめとした森の絨毯を踏みつける。膝あたりまでぐっしょりと濡れてしまった。
 そうこうして歩いていくと、漸く景色が開けていった。王都の近辺で見られたような麦畑であり、近辺には根菜系の畑であろう緑の絨毯が広がっていた。後で何を植えているのか聞いておきたい所ではあるが、それ以上に目を惹くのが、遠くに見える屋敷であった。

「あれが、そうだな」
「そうなんじゃないですか?ねぇ、ケイタクさん」
「えぇ?・・・あぁ、そうなんじゃないの・・・ねぇ荷物は」
「しょうがないなぁー。帰りは持ってあげますね!」
「はぁ、どうも・・・」

 ここまでの三日間、背中に乗っかり放しだった重みが全て消えた。三つの重みを背負ってパウリナはぐいぐいと先に行き、少年エルフに元気に会話をしようと試みていた。
 ユミルは歩きながらふと畑の傍に立てられた物騒なものを見た。木の十字架に磔にされたどこぞの誰かである。人間で、且つ身体のほとんどがまるで啄ばまれたかのように引き裂かれている。鳥葬によって屠られたのだろう。ああいうのが村の外れ、しかも入り口である森に向かって立てられている限り、好意的ではない。

「あー、歓迎は期待しない方がよさそうだな」
「そんなの最初から分かってた事じゃないですか。結果な
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