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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第3章 高校3年生
仲直りと初めての挫折
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だ俺に怒ってるんだと思ってすごく後悔してた。まあ、あんなメッセージの書き方したら、君を不愉快にさせるだろうとは思ってたけど。不器用でごめん』

「そう……だったんだ……」

 やっぱり珠莉の言った通り、純也さんは愛美とケンカになったことを後悔していたのだ。

『あの時はああ言ったけど、君の自立心とか向上心、俺はいいと思ってるよ。ただ、俺に甘えてもらえなくなるんじゃないか、なんて考えてしまったからついあんなことを言ってしまったんだ。ホント、男ってバカだろ? でも、決して本心じゃないってことは分かってほしいんだ』

「うん、分かった。もういいよ、純也さん。わたしもあのケンカのことはなかったことにしてあげる。もう忘れるよ。わたしの方こそごめんなさい。だからもう、今日で仲直りしよう?」

『そうだね。これで仲直りだ』

「うん!」

 もっと早くこうしていたらよかったのに、と愛美も思った。お互いに意地を張っていたけれど、仲直りしようと思えばこんなに簡単なことだったのだ。

「あのね、純也さん。例の長編小説、夏休みの間に書き上がったんだよ。もう編集者さんにデータ送ってあって、今連絡待ちの状態なの」

『そうか! お疲れさま。よく頑張ったね、愛美ちゃん』

「ありがとう! やっぱり、純也さんにモデルになってもらったから、書き上がったら報告しなきゃと思って。遅くなってごめんね」

 もっと早く仲直りできていたら、夏休みの間に報告できたのに。でも、遅くなってもちゃんと報告できたのでよかった。

『いや、わざわざ報告ありがとう。本になったら俺も読んでみたいな』

「まだ本になるって決まったわけじゃないけど、もしなったら買ってね。あ、それともわたしから見本誌をあげてもいいけど。その前にね、再来月に短編集が先に発売されることが決まってるの。そっちもぜひ」

『あははっ、売り込み上手いねー。短編集も、発売されたらぜひ買わせてもらうよ』

 愛美の必死な売り込みに純也さんは笑いつつも、「買う」と言ってくれた。それが彼の社交辞令だったとしても、それだけで愛美は嬉しかった。

「……純也さんは今、まだオーストラリアにいるの?」

『うん。こっちは今、冬の終わりって感じかな。でも寒さが厳しくてさ、早く日本に帰りたいよ。そっちはまだ残暑が厳しいんだろうな』

(あ、そっか。オーストラリアは南半球だから日本と季節が真逆になるんだっけ)

 地球の反対側にあるオーストラリアは、日本と時差はほぼないに等しいけれど、その代わり季節が逆転しているのだと愛美は思い出した。クリスマスにサンタクロースが雪ゾリではなく、サーフボードに乗ってやってくるというのが有名なエピソードである。

「そうなんだよね。明日から九月なのに、まだ真
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