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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第3章 高校3年生
本当の自立に向けて
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ただでさえ文芸部でも部長になって、そのうえ作家業もあって忙しいのに」

「ううん、そんなことはいいの。ちゃんと無理せずに全部こなしてるから」

 小説に関わることは、全部愛美が自分でやりたくてやっていることなのだ。文芸部の部長だって、引き受けてみたらけっこう楽しいので、今はやってみてよかったなと思っている。
 三年生に上がってからは勉強もますます難しくなり、愛美は奨学生でもあるので現役高校生作家を続けるのにグンとハードルも上がってしまったけれど、好きなことを続けていくことは決して楽しいことばかりではないのだ。時には苦労もしなければいけないのだと、愛美は分かっている。

「……あ、ゴメンね愛美! 仕事中だったよね。この話は一旦終わるから、執筆続けて」

「大丈夫だよ、さやかちゃん。話聞きながらキリのいいところまで書けたから。そろそろ休憩する」

「そっか。じゃあ、あたしはお母さんにさっきのこと伝えとくね」

「うん」

 愛美はさやかがお母さんに折り返すのを見届け、パソコンを閉じてキッチンでお茶の用意をした。今日は暖かいので、グラスに氷を数個入れて、ストレートのアイスティーを注いだ。ちなみに、寮のコンビニで買ってきた五〇〇ミリペットボトルの市販品である。

 勉強スペースに戻ってアイスティーを飲みながら、あしながおじさん≠ノ手紙を書こうと思い立った。愛美の愛読している『あしながおじさん』にも、似たようなシチュエーションが出てくることを思い出したのだ。

(えっと、あのお話の中ではどういう展開になったんだっけ? 確か、バイトを反対される代わりに旅行へ行くことを勧められて……)

 ジュディがそれを断るべく手紙を書いている最中にジャーヴィーが訪ねてきて、家庭教師をする決意を固めたジュディは彼とケンカになる。そんな展開だったはずだ。
 それはまさに、家庭教師のバイトを引き受けたいと思っている、今の愛美そのものだけれど……。

(まあ、あのまんまの展開になるとはわたしも思ってないけど。さて、純也さんはどうするんだろう?)

「……よし、善は急げだ」

 愛美は桜柄のレターパッドを取り出し、ペンをとった。


****

『拝啓、あしながおじさん。

 またの連投、失礼します。今日はちょっと、おじさまに報告というか相談したいことがあって、この手紙を書いてます。
 実はさやかちゃんから、「今年の夏休みにバイトをする気はない?」って声をかけられました。葉山にお住まいのさやかちゃんのお母さんの知り合いが、娘さんたちの家庭教師をしてくれる子を探してるんだそうです。上の娘さんが今中三で、高校受験を控えてるらしくて。あと、下の娘さんの勉強も見てほしいそうです。
 この話、最初はさやかちゃんに来たらしいんです
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