罰
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ヨンは嘲笑いながら腕を振る。今や彼の細胞ともいえるメダルが散り、メダルからあのミイラが生成されていく。
「監督役にはフラれ、結果願いは叶ったものの、このメダルの体……戦いを経ての願いを求めた者の罰、ということか?」
「そうかもな」
パピヨンの自虐に、コウスケが応える。
「幸いお前は参加者じゃねえ。曲りなりにも願いがかなった今、もう戦う理由はねえんじゃねえか?」
「……この状態で、永遠に生き続けるのか」
パピヨンは声を少し震わせた。
果たして、彼の視界には何が映っているのだろうか。血走った目で、キョロキョロとハルトたちを含めた周囲を見渡している。
「……これも、聖杯を求めた罰だとでもいうのか……」
「どうか、しましたか?」
えりかが心配そうに歩み寄る。
だがパピヨンの前に、二体のミイラが立ちはだかる。それは、えりかの同情を拒絶しているようでもあった。
「ああ……ああ……! なんて愚かしい選択だったのだろうな、この聖杯戦争は!」
「願いなど適わず、俺は短命の命から、むしろこの世界に不死身というなの牢獄に捕らわれてしまった! ああ、何という運命の皮肉だろうか!」
「お前、何で劇場風なんだよ」
コウスケのツッコミに構わず、パピヨンは辛うじて残っているベンチに腰を落とす。
「止めだ止めだ。こんなバカバカしい戦い、参加している者たちの気が知れない」
「全くその通りだよ。……ハルト」
「……」
もし、コウスケが今話しかけてくれなかったら、気が狂っていたかもしれない。
ハルトは音が鳴りそうなほどゆっくりと、コウスケに顔を向ける。
コウスケはハルトの肩に触れながら尋ねる。
「大丈夫か? 戦えるか?」
「……大丈夫」
逃げ出したい気持ちを抑えながら、ハルトは立ち上る。
「何か、本当にどうしようもないけど……頭の中、ぐちゃぐちゃなんだけど……やらなくちゃいけないことは、残酷なまでに分かってるんだ」
「……そうだな」
「結梨ちゃんに、罪は背負わせない……!」
ハルトは深く息を吐き。
「結梨ちゃんが、誰かに手をかける前に……! だから……えりかちゃん、パピヨン、フロストノヴァ……力を、貸してくれ!」
「……はい!」
「ふん」
「ああ」
えりかだけではない。
これまで敵対してきた者たちが頷いたことだけが、ハルトにとっての数少ない救いであった。
少しだけ。ほんの少しだけ、心が浮つくのを感じながら、ハルトはそれ以外の感情を振り切るように絞り出す。
「結梨ちゃん……この不幸はもう……終わりにしよう……」
『シャバドゥビダッチヘンシーン シャバドゥビダッチヘンシーン』
そして詠唱し始めるウィザードライバー
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