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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
XV編
第241話:血縁を断ち切る覚悟で
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めながら胸の内を吐露した。

「私の……私の血縁が皆に迷惑を掛けた……私の大事な仲間達を、身勝手な理由で振り回し、挙句の果てに小日向まで……そんな身内を、身内だからこそ私は許せないッ! 許す訳にはいかないんですッ!」

 生真面目で責任感が強いが故に、翼は己の血縁者が奏を始め仲間達に多大な迷惑を掛けた事が許せなかった。それを成した訃堂もそうだが、何よりもそんな血縁を結果的にのさばらせた自分が許せないのだ。だから彼女は、その宿縁とも言える因縁をここで断ち切るつもりなのである。例えその手を血で汚す事に繋がろうともだ。

 決意の固い翼の姿に、キャロルは複雑そうな目を向けた。キャロルは周囲の身勝手で父親を殺され、それを理由に世界を敵に回そうとした。翼の掲げる理由はキャロルのそれと真逆だ。周囲の為に血縁を手に掛ける覚悟をもっている。そんな彼女に掛ける言葉を、キャロルは持っていなかった。

 輝彦もまた、鋼鉄のように固い決意を胸に秘めた翼を説得できる自信が無かった。これほど固い決意を崩す事は一朝一夕にはいかない。ましてや今は急を要するのだ。悠長に説得などしてはいられない。

「……仕方がないな。弦十郎、連れて行こう。ここであーだこーだ議論してても始まらない」
「輝彦、しかし……!」
「要は彼女に手を汚させなければいいだけの話だろう。本丸が出たらお前と私でさっさと捕縛すれば済む話だ。違うか?」

 出された妥協案に、弦十郎は目を瞑りこれ以上ない位濃縮したコーヒーを飲んだような顔で唸り声を上げ悩んだ。確かに今は時間が惜しい。それに本音を言えば、敵の激しい抵抗が予想される為確実性を喫するなら戦力は1人でも多い方がありがたいのも確か。だからと言ってよりにもよって翼を連れていくのは気が引けると言うジレンマに悩まされたが、結局は輝彦の言う通り議論の時間が惜しいと言うのもあって翼の動向を許可する事となった。何度も言うようだが時は一刻を争うのだ。こうしている間に、未来が洗脳されて戻ってこられなくなる可能性もゼロではない。

「……分かった。ただし、翼は捕縛対象との戦闘は許可しない。翼の相手は飽く迄も敵の抵抗戦力のみだ」
「はい」

 取り合えず話が纏まった事に、輝彦とキャロルは小さく息を吐く。ハンスはあまり興味が無いのか途中から我関せずと言った様子である。

 しかし輝彦の中には未だ不安が渦巻いていた。弦十郎はああ言ったが、実際問題翼が訃堂と戦わずに済むかどうかは確実とは言い切れない。もし万が一、自分と弦十郎が抜かれる様な事があったら…………

――……いや、止めておこう。考えただけで縁起が悪そうだ――

 頭に浮かんだ可能性を輝彦は早々に忘れる事にしたのだった。一瞬脳裏に浮かんだ、翼と訃堂が戦う光景が現実にならない事を願って…………
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