暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
XV編
第240話:傲慢の芽を摘んで
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が悲しむのも当然だ。今のお前は、雪音自身を見ていない。雪音を守る事を見ている」
「それは……でも、大事だからこそ守るのは当たり前なんじゃ……」
「それは違うぞ、北上。お前は自分が傷付く事に慣れ過ぎてしまっているから分からないんだろうが、守ることは所詮手段に過ぎず結果ではない。自分を蔑ろにしてまで雪音を守り、その先にあるものを考えた事があるか?」
翼の言葉に対し、透は即答する事が出来なかった。やはり彼は、今まで守る事ばかりを考えて、その為に自分が犠牲になった先の事を考えていなかったのだ。とは言えそれも仕方のない話か。彼は我慢強い少年だ。耐える事が当たり前の日々を送って来た彼が、唯一欲した光がクリスなのだ。それを失わないようにする為に、彼が我武者羅になるのはある意味で当然と言える。その気持ちは翼にも何となく分かった。
だからこそ、翼は言わなければならなかった。同じように守る事を定められた防人としての人生を歩んできた先達として。
「いいか、よく聞け北上。今のお前は恐らくこう考えている。『自分が何が何でも雪音を守らなければならない、守ってあげなくてはならないのだ』……とな」
「ぁ……」
言葉を失った透に、翼は畳み掛ける様に言葉を紡ぐ。
「それはある意味で最大限の雪音に対する侮辱となる。雪音はお前が思っているほど、か弱い存在ではないのだ。それを考えず雪音の安全だけを考えて守ろうとするのは、これ以上ない位傲慢な事だぞ」
翼の言葉が刃の様に透の心に突き刺さる。言われてその通りだと、透自身理解してしまったからだ。確かに先程輝彦に鍛えられている間、彼はクリスを守る事のみ考えてその先の事を少しも考えなかった。身勝手極まりない独善に近い献身は、翼の言う通り傲慢さの表れであるのかもしれない。
それを理解したように、透の変身が解かれ素顔が露わになる。仮面の下に隠れていた透の顔は、申し訳なさと後悔に歪んでいた。
「僕は……ただ、クリスに笑っていてほしかっただけなのに……」
「その考え自体は間違いではないが、ならば尚の事もっと広い視野を持て。雪音を守りたいと思うのは、お前1人ではないんだ。少なくとも、ここに2人居る」
翼の言葉に透が顔を上げれば、翼と奏が穏やかな笑みを浮かべながら頷いた。そしてそれに続くように、透の脳裏には響を始め仲間の装者や魔法使い達の顔が次々に浮かんでいった。クリスを守ろうとしているのは自分1人ではなく、そしてクリスもまた彼の事を守りたいと思っている。それを自覚した時、透は先程までの自分が如何に傲慢でクリスを傷付けてしまったのかを理解した。
透は胸に溜まったものを吐き出す様に深く息を吐き出すと、翼の手を借りて立ち上がった。そして、憑き物が落ちたような顔でクリスに近付き彼女に頭を下げた。
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