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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
初デートと初長編 A
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「……美味しい! 甘さ控えめでやさしい味がする」

「だろ? これは絶対、愛美ちゃんに食べさせたかったんだ。気に入ってもらえてよかった」

 スコーンは確かに美味しかったけれど、美味しく食べている自分を優しく見守る純也さんの笑顔もまた、愛美にとっては贅沢(ぜいたく)なごちそうだった。

「……そういえば愛美ちゃん、ここでは写真撮らなくてよかったの?」

「あ、忘れてた!」

 純也さんに言われて気がついた。今日は行く先々で、取材として写真を撮っていたのに。ティータイムを楽しむのに夢中になって、すっかり頭の中からスッポリ抜け落ちていたのだ。

「でもいいの。このアフタヌーンティーは予定外の時間だったし、自分へのごほうびタイムだと思って取材は抜きってことにするから」

 もし、ここも「取材だ」と割り切っていたら、こんなに楽しめなかっただろうから。愛美もここは純粋に「デートだ」と思って、心から楽しむことにしたことにする。
 ……ただ、SNSにアップするためになら写真を撮っておいてもよかったかな、と思ったり。

「っていうか、純也さんってここでも目立ってるね。イケメンだし背が高いから」

「……ん? そうかな?」

 彼は気にしていないようだけれど、二人のテーブルの周りにいる女性客たちがみんなザワついているのだ。モデル並みの容姿を持つこのイケメンは一体何者かしら、と。

(そして、そのイケメンとふたりでお茶してるわたしは、彼の何だと思われてるんだろう……)

 少なくとも恋人だとは思われていないだろう。親戚とか、そんなふうにしか見えないかもしれない。

「でも俺は、君以外は眼中にないから。愛美ちゃんも周りからどう見られてるかなんて気にしなくていい。君が俺の恋人であることに間違いはないんだからね」

「あ……、うん。そうだよね」

 周りからどう見えるかが気になるのは、愛美自身が「純也さんとわたしは釣り合っていないんじゃないか」と気にしているからだ。

(愛美、純也さんの言う通りだよ。そんなの気にしちゃダメ! 彼が本気で好きになってくれたのはあなただけなんだから、もっと自信持たないと!)

「こんなに非日常が味わえる時間、周りの目なんか気にしてたら楽しめないよね。よし、ここにいるのはわたしと純也さんと、給仕の人だけ。他の人たちの存在は忘れちゃおう!」

「はははっ! 愛美ちゃん、それはいくら何でもオーバーじゃないか?」

「そうかなぁ?」

 純也さんは笑うけれど、そのおかげで場の空気が和み、愛美はこの非日常の空間での時間を心から楽しむことができた。


   * * * *


 ラグジュアリーな空間でのんびりお茶を楽しみ、愛美と純也さんはお腹も心も満たされた。

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