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禁じられた二人
第一章

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               禁じられた二人
「やっぱりなのね」
「・・・・・・ええ」
 彼女は私の問いに涙を流しながら答えた。
「誰も許してくれないわ」
「そうよね、やっぱり」
「誰にも言えないけれど」
 聞かなくてもわかる、そうしたことだった。
 彼女は良家のご令嬢、もう家同士が決めた婚約者がいる。
 私はその彼女のクラスメイト、表向きはそれだけの関係だった。
 けれど実は私達は愛し合っていた、心と心だけでなく身体と身体でも深く結びつき愛し合ってきた。
 私達は互いに愛し愛されていた、しかしそれは。
 女と女、決して結ばれないものだからだった。
 彼女は私にこう言った。
「私達は」
「そうなのね」
「私は。十八になったら結婚するから」
「もうすぐね」
 彼女の誕生日は一月後、その時にだった。
「貴女は彼のものになるのね」
「永遠にね」
「私の手から離れて」
「貴女も私の手から離れて」 
 互いにそうなる、そのことを思って。
 私も涙を流した、泣きたくはないのに自然に出てしまう。
 涙を流しつつ彼女に言った。
「御免なさい、けれど」
「いいの、私もだから」
 泣いているのはだった。
「それを言えば私もだから」
「こんなに悲しいことって」
「はじめてよね」
「ええ」
 私達は涙を流し合い話す。
「これまで悲しいことはあったけれど」
「これだけ悲しいのは」
「幸せになってね」
 私はその涙の中で彼女に言った。
「そうなってね」
「幸せに」
「彼、いい人よね」
「子供の頃から知ってるわ」
 家同士が決めた許婚として会い知っていることだった。
「とてもいい人よ」
「貴女を絶対に幸せにしてくれるから」
 だからだ、私は彼女に言った。
「貴女もね」
「あの人のところに」
「私は貴女を幸せには出来ない」
 それはどうしても無理だった、結ばれることは出来ない。
 だから私は彼女を幸せには出来ない、だからだった。
「その時、貴女が十八になるその前の日に」
「お別れね」
「そうしましょう」
 私から告げた。
「それでね」
「わかったわ」
 彼女も俯いて、そしてとても苦しい顔で答えた。
「その日にね」
「だからその日までは」
 残された僅かな日、それまでの間はだった。
「私達は一緒にいましょう」
「その日までは」 
 私達は二人で約束した、そしてだった。
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