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トップシークレット☆桐島編 〜お嬢さま会長に恋した新米秘書〜
リミット @
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いわけじゃないらしいの。お昼くらいに起きて、ご自宅の書斎でお仕事されてるらしいんだけど。自由ヶ丘から丸の内(ここ)までクルマを運転してくるのもつらいんじゃないかなぁ」

「もう……そんなにお悪いんですか。えっと、お仕事っていうのはこないだ先輩が話してくれたヤツですか? 絢乃さんのためにやっておきたいって、会長がおっしゃってたっていう」

 僕が先輩からその話を聞いたのは、それより一週間ほど前のことだった。

「ううん、そっちはもう終わられたみたい。会長がご自宅でなさってるのは通常業務の方。決裁とか色々ね」

「ああ、そっちですか」

 会長としても、とりあえず一つの大きな仕事を終えられたのだからひと安心、といったところだっただろう。

「……でもさ、桐島くん。そろそろリミットって考えた方がいいかもよ? あなたも覚悟決めないと」

「…………ですね」

 先輩の言わんとしていることが、僕にはハッキリと分かった。会長の命の期限(リミット)がもうすぐそこまで迫ってきている――つまり、絢乃さんが会長になられる日も近いということだ。

「ここだけの話だから、他の人にはまだ言わないでね? あたし、会長から直接伺ったんだけど、会長の中ではもう、絢乃さんを後継者に決めてらっしゃるみたい。遺言書も作られたって聞いたよ。正式なヤツ」

「そうなんですか? じゃあ……もう絢乃さんが次の会長ってことでほぼ決まりじゃないですか!」

 ほぼ≠ニ言ったのは、正式に就任が決まるまでには株主総会という関門があり、他の候補者がいなければ、という条件もプラスされるからである。

「そういうこと。だから、あたしは今、あなたにも会長秘書としての心構えを説こうとしてるの」

 ……そうか、もうそんなことになっていたのか。とすれば、僕もそろそろ移動先が秘書室だということを絢乃さんに打ち明けなければと思った。
 ちょうどもうじき新車も納車される頃だったし、クリスマスパーティーの日がちょうどいい機会だろう、と。……ただ、僕が源一会長の死期を待っていたかのように絢乃さんから誤解されたら……という心配はまだ残っていたが。
 この頃になってもまだ、絢乃さんのことを百パーセントは信用できていない自分がいた。

 僕は別に、「会長秘書をやりたい」と小川先輩や室長、先輩たちに公言していたわけではないのだが。自分の中では「絢乃さんに付く」=「会長秘書」という理屈ができあがっていた。だって、絢乃さんが会長以外のポストに就くことはあり得ないのだから。
 そして、彼女以外の人が会長に就任された場合、僕は会長秘書のポストを辞退するつもりでいた。僕は彼女の支えになりたくて秘書室に入ったのだ。彼女以外の人に付くなんて冗談じゃなかった。


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