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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
初デートと初長編 @
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純也さんにおねだりしたくて今日デートしてるんじゃないもん。だからそんなに気を遣わないで? 欲しいものがあったら、自分で買えるくらいのお金はちゃんと持ってるから。あんまり高いものじゃなければ」

「ああ……、そうか。ゴメン。今まで付き合ってきた歴代の彼女がそんな人ばっかりだったから、つい。愛美ちゃんは違ったよな」

 過去の恋人たちがそうだったから出てきてしまった、彼の悲しい(さが)。無意識にとはいえ、自分も同じように思われた愛美はちょっとばかりプライドが傷ついた。
 でも、そんな自分がイヤだといちばん思っているのは彼のはずだということを、愛美も分かっている。

「……ホントは、純也さんもあんなこと言うつもりなかったんだよね。だからもう気にしないで。次に行こ」

 愛美は彼のことを許して、次の場所へ行こうと促した。

「うん……。じゃあ、次は浅草に行こうか」


 二人は車へとって返し、銀座へ向かった。
 純也さんはここでもコインパーキングを利用し、(せん)(そう)()の雷門までは二人で歩くことにした。

「こんなにあちこち回るなら、車より電車の方が効率よかったかな。でも交通費がかさむし」

「そうだね。でもわたし、好きな人とドライブするの、ちょっと憧れてたから車の方がよかったよ。助手席に乗るのとか、恋人同士じゃないとあの距離感はなかなかできないことだし」

「そっか」

 ――二人は観光客でごった返す浅草寺へお参りし、(なか)見世(みせ)通りを歩いて回り、そこでも純也さんをモデルとしたイメージショットを撮影した。

「――愛美ちゃんは浅草寺でどんな願い事をしたんだ?」

「んー? 『純也さんが面白いって言ってくれるような、いい小説がいっぱい書けますように』って。純也さんは?」

「『愛美ちゃんが、たくさんの読者から愛される有名な小説家になれますように』って。もちろん、俺もその中の一人」

 彼は愛美の恋人であり、いちばんの愛美のファンでもあるのだ。そのために、あしながおじさん≠ニして援助してくれているわけで――。でも、愛美がそのことに気づいているとは、彼はまだ夢にも思っていないだろうけれど。

「……うん。わたし、絶対に純也さんが楽しめる小説を書くよ。その本が出たら絶対に読んでね。約束だよ」

「ああ、約束するよ」

 純也さんは愛美と指切りをしてくれた。寒空の下で指切りをしたので、どちらの指もヒンヤリと冷たかった。



「――さて、ちょっと早いけど昼食にしようか」

 合羽(かっぱ)(ばし)の道具屋筋なども回っていると、時刻は十一時半になっていた。

「うん。軽めのランチだと、どこがいいかなぁ? ハンバーガーとか?」

「いい
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