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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
冬休みin東京 @
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く、一人の人間として見てくれる人も。

「ええ、すごくいいところです。園長先生も他の先生たちも、わたしたちのことを大事にして下さって。ただ優しいだけじゃなくて、社会に出てから困らないようにって、色んなこと教えて下さいました。ゴハンも美味しかったし、イベントごとも多かったし」

「さようでございますか。きっとその施設の方たちは、園に暮らす子供たちを心から愛しておられるのでしょうね。旦那様と奥様にも見習って頂きとうございます」

 彼の最後の言葉には、愛美にも分かるほどの怒りの感情が込められている。使用人にまでこんな言い方をされる辺唐院家ってどうなんだろう?

「……ねえ珠莉ちゃん、もしかして珠莉ちゃんのお父さんとお母さんって夫婦仲悪かったりする?」

「ええ。元々二人は政略結婚で、愛情なんてなかったの。だから夫婦なのに、お互いのことに興味がないのよ。私のあとに子供をつくらなかったのがその証拠ね。お母さまは私を産んだことで、ご自分の務めは終わったと思われたのよ」

「へぇ…………」

 それなのに、生まれたのは娘だった。元々義務だけで結婚した夫婦だから、跡継ぎにならない子(少なくとも辺唐院家では)には愛情を注げないのだ。

「なんか……、やっぱり珠莉ちゃんのお家って変だよね。時代錯誤っていうか」

「愛美さんもそう思うわよね。戦前じゃあるまいし、って」

 愛美は珠莉の話を聞いていたら、これってホントに令和の話? と首を傾げたくなる。彼女の家だけ昭和――それも第二次大戦前で時間が止まっているような感じだ。

「うん。だからこそ、余計に純也さんがリアルな今の時代の人だって思えるんだよね」

「純也坊っちゃまは独自の価値観や考えをお持ちの方でございますから。当家では『それがおかしい』と思われておりますが、わたくしは坊っちゃまの考え方こそ今の時代にふさわしいと存じております。お嬢様方が先ほどおっしゃいましたように、純也坊っちゃまを『おかしい』と思われる旦那様や奥様、大奥様の方がおかしいのでございます。……や、これは失礼を! このことは他言無用に願います」

「分かりました。わたしたちの胸の中だけに収めておきます。ね、珠莉ちゃん」 

「ええ。あなたの名誉と、純也叔父さまのお立場のためにも、このことは私たち三人だけの秘密ということにしておきましょう」

 愛美・珠莉・平泉さんの三人は、この場で紳士協定を結んだ。

 ――リムジンは首都高速に乗り、東京都心の超高層ビル群や東京タワーなどを追い越していく。
 車窓からの眺めを楽しむ余裕の出てきた愛美はちょっとした観光気分だった。

「……わぁ、東京タワーだ! あれが見えたら『東京に来たんだな』って思うよねー。わたしも去年、さやかちゃんと一緒に見たなぁ。――
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