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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
冬休みin東京 @
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ないもの。家のために自分のやりたいことを犠牲にするなんて、今の時代ナンセンスよね。――その園長先生、とてもいいことおっしゃったわ」

「でしょ? その言葉にわたしもすごく勇気づけられたの。だから、純也さんに相談してみよう? わたしも一緒にお願いしてあげるから」

「ええ、そうするわ。ありがとう、愛美さん。私、あなたを見直しましたわ」

「うん、一緒に頑張ろ! ……でも珠莉ちゃん、『見直した』はないんじゃない? わたし今までどんな人だと思われてたの?」

「あら失礼! 今のは失言でしたわね、ホホホホ」

 憎まれ口が飛び出すあたり、珠莉はすっかり普段の彼女に戻ったようで、愛美はちょっとだけムッとしたけれど安心した。

(よかった、この調子なら大丈夫そう)

「――あのですね、珠莉お嬢様。先ほどのお話ですが」

「なぁに、平泉?」

 これまで運転に専念していた執事が、二人の会話に割り込んできた。

「わたくしも純也坊っちゃまと同じく、珠莉お嬢様の味方でございますから。……旦那様と奥さまの手前、表立っては申し上げられませんが、そのことはぜひ憶えておいて頂きたく、僭越ながら口を挟ませて頂きました」

「平泉、あなた……」

 珠莉は目を丸くした。この執事もきっと両親に従順だから、彼らと同じく夢を反対しているのだと思っていたので、今の発言が意外だったからだろう。

「平泉さん、いつも珠莉ちゃんのご両親の前ではすん≠ニしてるんだよ。ホントは珠莉ちゃんの背中を押してあげたいのに、健気だよねー」

 施設で育ち、自分の家がない愛美には使用人の苦労というものが想像できないけれど。小説家になった今、想像力を働かせることはできる。

「すん≠チていうのはよく分らないけど……。つまり、本心を隠していたということね。あなたも苦労しているのねぇ……。知らなかったわ」

「お気遣い、恐縮でございます。お嬢様はよいご友人に出会われましたね。高校にご入学される前よりお優しくなられました。――相川様、でございましたか」

「あ、愛美でいいですよ、平泉さん」

「では愛美様。先ほどの園長先生……でしたかのお言葉、わたくしも大変感服致しました。お嬢様のお話によれば、愛美様は施設のご出身であったことに少々コンプレックスを感じておられたとか。ですが、あなた様がお育ちになった施設は大変いいところだとお見受け致しました」 

 平泉さんの言い方は、愛美のことを不憫に思っているようには聞こえなかった。
 世の中には悲しいかな、施設出身者に対する偏見や同情的な見方をする人もまだまだ残っている。愛美もそのことは少なからず感じてきたけれど、彼や純也さん、さやかのような人たちもいるのだ。愛美のことを施設出身のかわいそうな子≠ナはな
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