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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
疑いから確信へ A
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「――さあ、愛美ちゃん。しっかりつかまってるんだよ」

 朝食後、自前のオフロードバイクのエンジンをかけた純也さんは、スペアのヘルメットをかぶって後ろに乗った愛美にそう言った。

「はい! わぁ、ドキドキするな……」

 好きな人と、バイクや自転車の二人乗りをする。愛美にはずっと憧れのシチュエーションだった。でも機会がないまま十七歳になって、今日初めての二人乗りが実現したのだ。

 愛美はそっと両腕を伸ばして、純也さんの引き締まったお腹に回した。

「コレをできるのが、両想いになってからでよかったです。片想いの時だったら、気まずくてできなかったと思うから」

 彼の背中にもたれかかるのは、恋人である愛美だけの特権だと思う。

「うん。じゃあ行こう!」

 二人の乗ったバイクは勢いよく、そして安全運転で走り出す。
 田舎道なので、途中で何度もガタガタ揺れたけれど、それさえも愛美にはテーマパークのアトラクションのようで楽しかった。

「――おかえり。ちゃんと出せた?」

「うん。付き合ってくれてありがと。次はどこに行くの?」

「せっかくバイクで来たんだし、ちょっと遠出しようか。途中で昼食を摂って、それから帰るとしよう」

 純也さんは愛美の質問に答えてから、嬉しそうに笑った。

「? どうしたの?」

「そういや愛美ちゃん、僕への敬語はどこに行ったの? さっきから思いっきりため口で喋ってるけど」

「あ……、ゴメンなさい! 付き合ってるからってつい……。敬語に戻した方がいいですよね」

「ううん、いいよ。直さなくていい。これからは対等に話そう」

「うん……!」

 二人の間から敬語がなくなったおかげで、また少し距離が縮まった気がした。
 ――ただ、「純也さんがあしながおじさん≠カゃないか」という愛美の疑惑は、まだ晴れないままだけれど……。 


   * * * *


「――ねえ、愛美ちゃん。例の屋根裏部屋、僕も見せてもらっていいかな?」

 翌日。朝食を済ませた純也さんが、食後の片付けを手伝っていた愛美に訊ねた。……もっとも、このことを訊く相手は多恵さんなんじゃないだろうかと愛美は思ったのだけれど。

「多恵さん、純也さんがこう言ってるんですけど。どうします? いいですか?」

「ええ、構いませんよ。いつでもご覧になって下さいましな。あそこは元々坊っちゃんのお部屋でございますから」

「……だそうなんで、わたしはいいですよ。一緒に行きましょう」

 ――というわけで、愛美は純也さんと二人、屋根裏部屋へと足を踏み入れた。

「わぁ……、ここに来たの久しぶりだ。懐かしいなぁ」

 彼は約二十年ぶりに入ったこの場所に、懐かしさで目を細める。

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