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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
疑いから確信へ @
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い。

「よかった。純也さんがよく小説に出てくるような俺様な御曹司じゃなくて。わたし、ああいう男の人たちって好きじゃないんです。女の子が何でも自分の思い通りになると思い込んでる。ふざけるなって思います」

 小説の登場人物に腹を立てても……と、純也さんは苦笑い。

「そうだね。僕は強引に恋愛を進めたいタイプじゃないから。っていうか、できないし。愛美ちゃんに嫌われるのが一番イヤだもんな。せっかく僕のことを本気で好きになってくれたんだから、大事にしたいんだ」

「純也さん……、ありがと」

 愛美は心からの笑顔で、彼にお礼を言った。

「――で、今日はどうするんだい? 僕は、一緒にバイクでツーリングしたいなぁって思ってるんだけど」

「あ……、今日は郵便局に行くつもりでいたんだけど」

「郵便局? ……ああ! 小説を応募しに行くんだね」

「はい。あと、おじさまに手紙出すのもね。これだけの厚みになっちゃったモンだから、通常の料金じゃ足りないと思って」

 愛美はもう出かける支度をしてあって、リュックには郵便局に持っていく二通の封筒も入っているのだ。そこから小さいほうの封筒を取り出して、純也さんに見せた。

「これは……、確かに分厚いな。明らかに二センチはありそうだ。これじゃ、郵便局に持って行って、料金を調べてもらうしかないな」

「でしょ? もう一週間くらい書き溜めてあったの。でも、ついつい出しに行きそびれちゃって、気がついたらこんな状態に……」

 あしながおじさん≠ヘきっと、愛美からの手紙を首を長くして待っているだろう。――そう思うと、愛美は申し訳ない気持ちになる。

(でも……、もしも純也さんがおじさまの正体なら、今手紙を出したって意味がないってことになるんだよね……)

 愛美は向かいに座っている純也さんの顔をチラッと窺う。

「あの、そろそろ封筒返してもらっていいですか?」

 愛美は純也さんに向かって手を差し出す。

「ああ、ゴメン! ……ん? ちょっと待って。久留島栄吉≠チていうのが田中さんの秘書の名前なのかい?」

 やっと封筒を返してもらえた愛美は、目を丸くした。

「ええ、そうですけど。純也さんスゴい!」

「えっ! スゴいって何が?」

「初めてこの字見てくるしま≠チてすんなり読める人、めったにいないの。だいたいの人はくりゅうじま≠ニかきゅうりゅうじま≠チて読んじゃうんです。だからスゴいな、って」

「ああ、そういうことか。――ほら、田中さんと僕は知り合いだろ? だから、彼の秘書のことも知ってたんだ」

「…………へえ、そうなんですか。今までそんなこと、一度も言ってくれたことないから」

 しれっと弁解する純也さんに、愛美の疑惑はま
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