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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
ホタルに願いを込めて…… A
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どうしても急がなきゃいけない案件だけは、こっちにメールで送ってもらうことにしたんだ。社長って大変だよ」

「そうなんですか。じゃあ、あんまりわたしとは遊べないですね」

 愛美はガックリと肩を落とした。彼が休暇でここに来ているなら、一緒に過ごせる時間もたっぷりあると思ったのに……。
 
(でも、お仕事があるなら仕方ないか。ここに来てくれただけで、わたしは嬉しいもん)

「そんなことはないよ。仕事は夜になってから片付けるし。遊べる時は思いっきり遊ぶ。オンとオフの切り換えがきっちりできることも、一流の経営者の条件なんだから」

「えっ?」

「それに、愛美ちゃんは何か僕に相談したいことがあるって言ってたろ? それもちゃんと聞いてあげるよ」

「はい。……ちゃんと覚えて下さってたんですね」

 愛美は胸の中がじんわり温かくなるのを感じた。一ヶ月も前に、電話で話した内容なんてもう忘れられていると思っていたのだ。

「もちろんだよ。僕は、一度した約束は絶対に忘れないからね」

「ありがとうございます! ――でもあの件は、あの後もうほとんど解決しちゃってて……」

「それでもいいから、とにかく話してごらんよ」

「はい……。でも長くなりそうだから、別の日にゆっくり聞いてもらいます」

「分かった」

 純也さんの返事を聞いた愛美は、「ところで」と彼の大きなスーツケースの中身(ファスナーは開けてあるのだ)を眺めながら言った。

「釣りの道具って、コレですか?」

「そうだよ。愛美ちゃんの分もあるから」

 スーツケースの中には洋服などが入っているのかと思いきや、中に入っているのは釣りに使う竿(タックル≠ニいうらしい)やルアーのボックスなどだった。
 他にも色々、キャンプ用具などのアウトドア関係のものが詰め込まれている。

「釣りって、生きた虫をエサに使うんじゃないんですね。もしそうだったら、わたしどうしようかと思ってました」

「さすがに初心者の、それも女の子にいきなりそれはかわいそうだからね。明日教えるのはルアーフィッシングだよ。この時期は、イワナが釣れるはずなんだ」

「イワナかぁ。あれって塩焼きにしたら美味しいんですよね」

 実は愛美も、実際にイワナの塩焼きを食べたことがない。これは本から得た雑学である。

「そうそう! 特に釣りたては新鮮でね」

「わぁ、楽しみ! じゃあ、明日は早起きして、多恵さんと佳織さんと一緒にお弁当作りますね」

 釣りの話で盛り上がる中、愛美はあることに気がついた。

「そういえば、服とかはどこに入ってるんですか?」

 スーツケースの中には、それらしいものはほとんど入っていない(釣り用のウェアや長靴などは別として)。

「あ
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