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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
ホタルに願いを込めて…… A
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物ほどではないにしても、男性にしては荷物が多い気がするけれど……。
「愛美ちゃん、悪いんだけど車のトランク開けてもらっていいかな? 今ロックを外すから」
「えっ? ……ああ、はい」
愛美は戸惑いながらも、彼のお願いを聞いた。
(……もしかして、まだ荷物が?)
愛美がトランクを開けると、そこには信じられないものが積まれていた。
「これって……、バイク?」
「そうだよ。もう一台の僕の愛車。――愛美ちゃん、ありがとう。あと降ろすのは自分でやるから」
純也さんが車から降ろしたのは、ライトグリーンの中型のオフロードバイク。
愛美はバイクのことはまったく分からないけれど、純也さんの話では二五〇
cc
(
シーシー
)
サイズらしい。
「これで、愛美ちゃんを後ろに乗せて山道とか走れたら楽しいだろうな……と思って積んできたんだ。……あ、ちなみに僕、大型二輪の免許持ってるから」
「へえ……、スゴいですね。なんかカッコいいなぁ」
愛美はそう言いながら、頬を染めた。思わず、バイクの後部座席で彼の背中にしがみついている自分の姿を想像してしまったのだ。
「――あらあら! 純也坊っちゃん、いらっしゃいまし! まあまあ、こんなにご立派になられて……」
そこへ、多恵さんも飛んできた。家の中で家事でもしていたのか、エプロンを着けたままだ。
「多恵さんも、元気そうだね。急な頼みをしてすまないね。僕の部屋は空いてるかな?」
「はい、もちろんでございます! いつ坊っちゃんがいらっしゃってもいいように、ずっとそのままにしてございますよ。さあさ、坊っちゃん! お上がり下さいまし!」
多恵さんはもみ手しながら、純也さんを家の中へと促した。
「……どうでもいいけど。多恵さん、僕のことを『坊っちゃん』って呼ぶの、いい加減やめてくれないかな? もう三十なんだけど」
純也さんは困惑気味に、多恵さんに物申していた。
いくら相手が元家政婦さんでも、アラサーの男性が「坊っちゃん」呼ばわりされるのは恥ずかしいんだろう。
「何をおっしゃいます! 私と夫にとっては、坊っちゃんはいつまでも坊っちゃんのままですよ。ええ、私はやめませんよ! いくら坊っちゃんのお願いでも」
「……ダメだこりゃ」
やめるどころか、多恵さんの「坊っちゃん」呼びは余計にひどくなっている。もう意地なのかもしれない。
「多恵さんはきっと、いくつになっても純也さんが可愛くて仕方ないんですね。ほら、お子さんいらっしゃらないでしょ? だから純也さんのこと、自分の息子さんみたいに思ってるんですよ」
「はあ。そんなモンかね」
愛美の意見に、純也さんは困ったように肩をすくめてみせた。
善三さんと多恵さん
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