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拝啓、あしながおじさん。 〜令和日本のジュディ・アボットより〜
第2章 高校2年生
ホタルに願いを込めて…… A
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来てくれたねぇ。もう荷物は届いてるから、天野君に部屋まで運んでもらってあるよ。――さ、乗りなさい」
「ありがとうございます。じゃあ、おジャマしまーす」
礼儀正しく挨拶をした愛美を、善三さんはニコニコしながら白いライトバンの後部座席に乗せてくれた。
「――あ、多恵さん。いいお知らせです。純也さん、今年の夏はこちらに来られるそうですよ」
「あら、坊っちゃんが? でも、ウチには連絡なかったわよ。ねえ、お父さん?」
驚いた多恵さんは、首を傾げて夫である善三さんを見た。
「ああ、電話はなかったねぇ。愛美ちゃんはどうして知ってるんだい?」
「実はわたし、五月から純也さんと個人的に連絡取り合えるようになったんです。で、わたしが先月かな、お電話した時にそうおっしゃってたんで」
「そうなの? 知らなかったわ。でも、あの坊っちゃんが女の子と個人的に連絡を取るようになるなんて……。愛美ちゃんは、よっぽど坊っちゃんに気に入られてるのね。――で、坊っちゃんのご到着はいつごろになるの?」
「あ……、それはまだ分かんないです。お忙しいのか、その後連絡がなくて。さっき、わたしからもメッセージ送ってみたんで、そのうち折り返しがあると思います」
純也さんが、愛美からの連絡を無視するはずがない。連絡がないのは、本当に多忙だったからだろう。
愛美はスポーツバッグのポケットからスマホを取り出した。メッセージアプリを開いてみると、新幹線の車内から送ったメッセージはちゃんと既読になっている。
(純也さん、ちゃんと見てくれたんだ……。よかった)
彼はきっと、今日も仕事に追われているんだろう。社長は社長で、それなりに忙しいものだ。
それでも、愛美からのメッセージにはちゃんと目を通してくれている。愛美はそれだけで嬉しかった。
****
『拝啓、あしながおじさん。
長野の千藤農園に着いて、十日が過ぎました。
わたしは今年も農作業のお手伝いにお料理に学校の宿題に、それから公募用の原稿執筆にと忙しい夏休みを過ごしてます。そのおかげで、毎晩クタクタになってベッドに入っちゃうので、おじさまに手紙を書く時間もなくて。
多恵さんは最近手作りパンにこってるらしくて、わたしも毎日、佳織さんと一緒にお手伝いしてます。生地をこねたり、多恵さんが買ったばかりのホームベーカリーでパンがふっくら焼けるのを、お茶を飲みながら待ったり。すごく楽しいです☆ そして、焼きたてのパンはすごく美味しいです! おじさまにも食べて頂きたい。きっと喜んで下さると思います。
純也さんからは、まだ連絡がありません。わたしが送ったメッセージは見て下さったみたいなんですけど……。きっと忙しくて、返信する暇もないんだろうな。
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